菅政権はもう暫く続く【秋の政局雑感】

2021年8月13日

東京オリンピックが閉幕し、感染拡大第五波の渦中でお盆入りを臨むこの時期にあって、政権批判はより一層苛烈なものになっている。危険水域と目される30%前後で長く推移していた政権支持率はNHKによる8月10日の調査でもやはり29%という低い数値になったのと同時に不支持率も52%をマークし、直近年では安倍第四次内閣の末期にあたる2020年6月に記録した49%という数値をも更に上回ることとなった。

これを以て、国民或いは”世論”は現政権を国の舵取り役として不適格であると見做しているとするか、それともただの調査数値に過ぎずせいぜい参考程度にしかならないと割り切るかは人によるだろうが、少なくともたとえば二階俊博氏が「国民は菅総理の続投を望んでいる」という主旨の発言をしたことは国民感情とのギャップを感じさせるものだったし、安倍・麻生両氏が菅総裁は再選されるべきという立ち位置を崩さないことに対して、党内の第一派閥で安倍氏が実質的な後見人を務める清和政策研究会(細田派)や第二派閥である志公会(麻生派)の内部からすらも疑問の声があがっているとの報道を盛んに見聞きするようになって来た。

このような状況にあって、早くも総裁選出馬の意向を示した者が居る。高市早苗氏だ。同氏は安倍政権において総務大臣のポストを長く務めるも現政権になってからは要職になく無所属のまま過ごしていたが、ここに来て自ら”ニュー・アベノミクス”と称する政策を掲げ安倍政権の政策を発展的に継承するという姿勢を見せており、党則に定める正規の総裁選を経ずに現職に就きピンチヒッター的に首班指名を受けた菅総理の続投にノーを示した格好だ。

それ以外で、誰がいつ名乗りを上げて来るのかは不透明だが、細田派からたとえば経済再生担当相・西村氏が出て細田派・麻生派の票が一本化されたりすれば菅総裁の再選は難しくなるだろうとも思われたところで、7月8日夜の西村氏の”失言”である。緊急事態宣言発令に際しての記者会見において、兼務している新型コロナウイルス感染症対策担当相の立場で、アルコール類を提供する飲食店が休業要請に応じない場合は店舗の情報を関係省庁・金融機関とも共有し、金融機関からもこれに応じるように働き掛けを行ってもらうと述べたことで厳しい非難を浴び、水面下で進めていたことを不用意に発信したことで政権内ならびに党内でも信用を落としたとされるため、直近で総裁の椅子に座ることはまずないだろう。

では他に誰が菅氏の”後継候補”になり得るのかと言えば、最重要キーマンである安倍氏が5月26日発売の月刊誌『Hanada』の取材に応じるかたちで言及したのは、茂木敏充外相・加藤勝信官房長官・下村博文政調会長・岸田文雄氏(前政調会長)の四名であった。

ここで注意すべきは、後継者として表に出るのが必ずしも今ではないということだ。安倍氏は、衆院選で与党側が勝てば総裁選で菅氏が無投票再選されるべき、という考え方を堅持しており、麻生氏もこれを支持している。この”べき”論は、5月3日にBSフジの番組内で総裁選に触れた際に、総裁選は1年前に実施したばかりであり当然菅氏が続けるべき、自民党員ならば常識として考えるべき、などと発言し菅氏再選支持を表明してから変わっていない。

ゆえに、菅総裁がどんなに心許ない案山子のような存在で絶え間ない批判の風に晒されていても、それが倒れてしまわないように安倍・麻生両氏がしっかりと支えている限りは年単位で菅氏が続投するだろうというのが私の見立てだ。この両氏、というか両派の勢力を突き崩すには数の論理で最低でも2~3の派閥の共闘が必要になる訳だが、第一に担ぐ人材が見出せないこと、第二にまとめ役を買って出る音頭取りが居ないこと、これら二つの理由により直近でその可能性は低いとみる。

ここで、総裁・総理がどうこう以前に衆院選で自民党が下野する可能性すらもあるのではないか、というのもひとつの意見としては出て来るだろうが、前段で述べた自民党内の複数派閥共闘による新総裁候補擁立は難しいだろうという予見と同じ理由で、野党共闘による政権奪取の実現可能性は極めて低い状況とみる。

視点を変えて世論調査では、河野太郎氏こそ次世代リーダーに相応しいとする声も強いようだ。しかし、所属派閥の領袖である麻生氏からは常識に欠ける危なっかしい人物としてに認識されているようで派閥として推されることは今の段階では無さそうである。

私見では、韓国との徴用工問題が再び持ち上がった際の毅然とした態度表明によっていわゆる”ネトウヨ”も含めた嫌韓層から支持を得ていることや、周辺国・海域や香港・台湾等に対して中国が覇権主義的な姿勢を強めていることから国防・国益に関する警戒感が高まって来ている時局に及び、同氏なら中国に対しても従来的な”遺憾の意”に留まらない強い言葉や態度で臨んでくれるのではないかという期待感が河野氏人気の源泉であると推察しているが、仮に数年後にでも総裁選に臨むことになればかつての小泉純一郎氏のように破壊力とエキセントリックさを備えたリーダーとして面白いことになるかも知れないと興味本位で注目もしている。

また別の一手として、たとえばどこかのタイミングで現東京都知事・小池百合子氏が国政に復帰して今の二階氏(志帥会)・小池氏ラインがより強固さを増し、そこに麻生派に比肩する勢力を誇る平成研究会(竹下派)、宏池政策研究会(岸田派)が合流したり無派閥界隈が倒閣目的で合致しニューリーダーを担ぐような動きが起こればこれまた面白いことにもなるだろうが、やはり現時点ではそのような政局を展望するには時期尚早であるように思う。

このように見て行くと、大変頼りなくまた詰まらなくも結論としては、菅総裁・総理との付き合いは思いのほか長引くだろう、ということになる。

ぱちんこ業界との関係性については、自民党下野の可能性はほぼあり得えないという理由において、直近年で業界の在り様に影響を与えるほど大きな変化がもたらされることはないだろう、という結論になる。

以上が、秋の政局についての私見である。

楽太郎

Posted by 楽太郎