秘せずば花なるべからず

2021年7月3日

諸人にとり冥々の裡に物事は進み、誰かがはたと気付いた時には既に遅し、もう大局は不可逆な状況になってしまっていてやがて勝敗は決する―――というような劇的な場面は人気漫画において稀代の軍略家が支配する戦場の描写でよく見受けられる。今流行りのものなら、週刊ヤングジャンプで連載中の『キングダム』における李牧や王翦の采配といったところだろうか。

では現実世界でそのような場面が本当にあるのかどうかについてだが、現代の”大戦(おおいくさ)”をスポーツの優勝決定戦のような場面に置き換えるのか、それとも大国間同士での覇権争いを例にとるのか、或いはビジネスシーンで大企業内で繰り広げられる主導権奪取を巡っての多数派工作などをもってイメージするのかは、人によって異なるだろう。

たとえば、大ヒットした『半沢直樹』などのようなドラマには、そのような場面があるのだろうか。私は不案内だが、もしもあるならそういった”盤上の流れが一気にひっくり返る爽快感”を味わうためにDVDでも借りて見てみたいと思う。

このような大逆転劇、大番狂わせ、神算鬼謀の基礎としてあるのは”秘める”ということだ。それが予知し難いほどに、顕現・発動した際の驚きや効果は絶大なものになり戦局を一変し得る。

かの太宰治は『斜陽』において、登場人物のひとりに、他の生き物には絶対に無くて人間にだけあるもの、それが”秘め事”だと言わせている。しかしこれが、どうにも難しいことを我々はよく知っている。秘め事は、それをチラつかせる時こそが最も愉悦を感じるからだ。

”その時”まで、とっておきの一手として留め置くことができるだろうか。自ら人に話してしまったり、感知されてしまわないだろうか。露見するのを過度に警戒すれば逆に怪しくもなろうし、事の中心人物の身に異変があった際の保険として複数名で共有などすればそれに連れて漏洩のリスクも高まる。故に、あるべき期間・あるべきやり方で秘め続ける、というのはとても難しいことなのだ。

いまぱちんこ業界は、新規則機化の過程における最後の7カ月間という”終盤戦”にある。商圏内において、これまでなんとか耐えて来たもののいよいよ息継ぎが厳しくなって来たと聞き及ぶホール企業・店舗も出て来ているし、組織体において人が変われば組織も変わるだろうと予見されるような動きもある。

これらが顕現した際に、驚倒狼狽して動きを止めてしまわぬように、周囲が戸惑う中でも自社・自店が適切な仕掛けを行うことができるように、情報を取捨選別しつつ好機を伺いたいと思う。

楽太郎

Posted by 楽太郎