頬杖をついて”考える人”は何を思う-改めて、不正監視への意識を

2021年4月23日

私が居る関東圏のホールでは今週からPウルトラマンタロウ2の導入が始まっており、本日社用での外出途中にお邪魔した店舗でも3台が設置されていてデータランプを一瞥した限りではしっかりとした稼動になっているようだった。肝心の運用レベルは……残念ながらかなり厳しめに見えたが、それでも若い男性2名と、彼らに挟まれるかたちで営業カバンを膝の上に乗せて少し抱え込むような格好で明滅する画面に見入っている50代くらいの男性会社員の姿が印象的だった。

大きなカバンを棚の上に置かないのは重要な社用物でも入っているからだろうか。本来であれば顧客まわりの営業途中なのだろうが、世代的に”ドンピシャ”であることと、店外にはB0サイズの立派なポスターが掲示してあり”大注目の話題機”として扱われている(事実か否かは読者諸氏の判断にお任せする)ことも手伝ってか、通り掛かった際に思わず店舗に吸い込まれてしまったのかも知れないなどと想像を働かせながら、当の私はトイレだけ拝借した。

スーツの背中が汗ばむくらいの陽気の屋外とは打って変わり、適温適湿が保たれた広々としたトイレの個室にてまるでロダンの『考える人』のようにポーズを決めながら、「そういえばサプライズ枠初期の頃のタロウには、たしかゴト事案があっただろうか」と振り返った。当時のタロウはCRウルトラマンタロウ戦えウルトラ6兄弟という機種名だったかと思うが、ウルトラマン系の機種は沢山世に出ている上に名前も似通っているためどうにも判然としない。

それで帰宅した後にすぐ、昔の資料を漁ってみた。何か分からない事や失念したことがあると、何が分からないのか忘れないうちになるべく早く調べるのが私の常だが、今回は記憶違いで、実際にゴト被害が発生したのは同じサプライズ枠でも京楽がいわゆる1種2種混合スペック機で覇権を握った象徴的な機種であるCRAKB48の方であった。

これは関東圏でも被害が報告された上皿・台枠の引っ張りによる”ガラス浮かし”や”引っ張り”などと呼ばれる手法で行われたゴト行為であり、原理は至極簡単。遊技盤面とガラス内面の間隔を拡げる事で、弾き出されて盤面を流れ落ちていく玉が一カ所で立体的に力を持ち合うことでブドウが形成されるというものだ。この玉の”前留まり”の端緒となる部分はちょうどテトラポットのような形になっており、これが寄りの逆ハカマの出口や一般入賞口付近などのピッチ(ピッチサイズ、釘幅)が狭い箇所で生じると、そう簡単には崩れない。

これにより、例えばワープ通過からのステージ経由での入賞率が劇的に向上したり、道釘を渡る際に下部に零れず滑り台のように一直線に始動口へと流れて行くなど、単純なアナログゴトながらも実効性は高い手口と言える。もちろんベース異常などの発報により事務所・POS或いは機器の前に人員が居なくともインカム連動にて即時感知することができる訳だが、最近では人件費抑制の目的で特に早番時間帯の勤務者を減らしていたり、小規模店舗を中心にインカムとアラートを連動させていない場合も多かったりするだろうことで、電子機器を用いるなど変に凝ったゴト行為よりはアナログ系ゴトの方が容易で尚且つ店側にバレにくいと判断する”輩”も居ることと思う。

実際、自店でも20年ほど昔、上皿に肘を突いてちょうど前述した”考える人”のようなポーズで遊技していた者が実は時計に見せ掛けた強力磁石で遊技盤の寄り付近にブドウを作っていた、という事例がある。ホール営業における不正監視上の鉄則としては「逃げる者は追うな」であり、こちら側の目配りに危険を察したのか出玉を置いて逃走しその後は二度と来店しなかったが、輩は輩で色々と悪だくみしたり不正器具を自作するなどして臨むのだということを改めて実感する出来事だった。

店舗によっては上皿に肘を突いての遊技自体をハウスルールで禁止にしているところもあるだろう。これはユーザー目線では厳し過ぎるものかも知れないが、何かしらの手段で作ったブドウや不正な器具の仕込み等を隠すためにそうする輩が沢山居たことで非常に悩まされて来た業界事情を考えると、同業としてはそのような店側の警戒心は否定できない。

大局的に見れば、長年に亘る警察庁による射幸性低減の取り組みとゴト事案の発生件数の減少には関連性があると言えるだろう。近年で分かり易い例を挙げれば、いわゆる旧MAXタイプ機の撤去の流れで訪れた継続率上限65%内規時代のように、敢えてゴト行為に及んでまで払い出しを得ようと思えるハイスペックな機種が減少したことと、そもそもの遊技人口の絶対数の減少という分母縮小の理由で、この手のゴト事案も輩の数自体も一旦は減少したと考えられる。

しかし昨年の春以降は、P大工の源さん超韋駄天に代表されるように改正規則と自主規制としての内規の範囲内でメーカー側が最大限努力した結果、ユーザー目線で「新規則時代でも、店側がまともな運用をしてくれさえすれば、充分に遊べる」と思えるような機種が続々と登場している。それ故に、またぞろゴト事案の件数も増えていく懸念が高まっているという矢先に、まさにその韋駄天で4月初旬から異物挿入によるアナログ系ゴトにより不正に大当たりを直撃するという事例が出て来たものだから堪らない。

直近年では電子機器によって払い出しに不正に干渉しようと試みるハイテクではなく、アナログ的な手法で行われるローテクのゴト行為の方が割合が多くなって来ており、パチンコ・スロット全体に対して約6割がパチンコ機へのローテクゴトという状況にある。

具体的に見ると、糸付き玉や磁石の使用、また韋駄天のように異物挿入等の手段がとられており、ホール側としては改めて不正監視への意識を高めることでゴト行為を防止したり輩を排除する必要があるような状況になっている。そして、そのような取り組みこそが、店側の利益のみならず大多数の善良なユーザーを守ることにも繋がると述べて本稿を締める。

楽太郎

Posted by 楽太郎