繁華街・商店街が廃れれば地域住民の生活導線も変わる

2021年2月26日

ホールの営業立地条件を分析する際には、まずは「大都市部」「中都市部」「小都市部」のように商圏規模で分け、その後「ビジネス街」「学生街」「繁華街・商店街」「ターミナル駅前」「郊外・ロードサイド」「郊外・駅前」などのように区分していく場合が多い。

「繁華街・商店街」をそのように有らしめる要素としては当然、飲食店をはじめとしたリテール(小売)業種のリアル店舗型営業施設が一定区域内に多数・多様に存在しているということが挙げられるが、もうそろそろ丸一年が経過することになるコロナ禍において、まさにこの繁華街・商店街にマイナス影響が直撃した格好だ。

直近で日本フードサービス協会が発表した2021年1月の外食産業の売上高は前年の同月比で実に21%減という数値であり、特にファミレスと居酒屋・パブなどの店舗がより大きなマイナス幅となっていた。また日本ショッピングセンター協会調べになる「SC販売統計調査報告 2020-21年 年末年始販売統計調査報告」を参照すると、年末年始(12月28日~1月3日)期間における前年同期間での対比数字は売上高がマイナス28%、レジ客数がマイナス27%、客単価がマイナス2%となりいずれの指標でも厳しい結果となっており、1,000~2,000名水準という非常にインパクトがある新規感染者数の報道が世の中に与えた影響の大きさが数字として表れたと言えるだろう。

駅ビル・ショッピングセンター・繁華街・商店街があるからこそ保たれているという地域は全国各地にとても多く存在しており、外出自粛傾向の強まりと地域住民の購買意欲の低下により街自体が死んだような雰囲気に包まれている地域も出て来ているものと推察する。

実際、東京のような都市部であっても時間帯によっては、古い歴史を持ち”~銀座”などと称する商店街や、TV番組などでよく取り上げられる渋谷駅前の一角や新宿の飲み屋街、池袋のサンシャイン通り、”高齢者の原宿”としてお馴染みの巣鴨、従来のアメ横に加えここ十数年間で屋台型店舗が多く出店したことで観光客の立ち寄りが急増した上野など、人通りが多い雑多な界隈として認知されていた繁華街・商店街ですらも本来の活気を失っている状況である。

もちろん、先に紹介したような統計上の売上減や、時短・休業によりシャッターを下ろしている店舗数が増えているという目に見えることだけで、その業種・店舗の今後も極めて危ういものになる、という見通しになるかといえば必ずしもそうではない事情がある。時短要請への協力金の存在があるからだ。個人経営の手狭な居酒屋やスナックなどは、資金遣り繰り上フルタイム営業するより助かっているという場合もあるだろう。しかし、店舗維持に対するこの協力金の貢献度を個別に計るのは不可能であるため、ここでは割愛する。

街の姿の変容について、意外な他業態においても傾向として出て来ている。金融機関の支店・営業所の統廃合によるものである。これはコロナが直接的に影響したというよりは、コロナによって変容が加速したという表現の方が適切だろうか。

店舗削減の動きは、まずメガバンクで見受けられ、特に三菱UFJ銀行は515店舗(2017年末時点)のうち2023年までに4割を減らすという思い切った方針を発表している。他行においても、統廃合はもちろん窓口を閉鎖してATM設置のみに変更したり小型店舗に置き換えたりといった具合いに、大規模な見直しを図っている最中である。

また、地方銀行においては、より一層の変化の途上にある。これには、菅総理が元から公言していた政策のひとつである”地銀再編”が影響している。この再編計画の内容を端的に言えば、まずは準備段階として赤字経営や経費率の上昇に苦しむ地銀・第二地銀同士が合併して仮に同一の都道府県内において市場シェアが上昇したとしても、それに対して独占禁止法を適用しないという特別措置を講じる期間を設けたことが挙げられる。この期間は2030年までとなっており、つまりはそれまでに自行の在り方を見直すべしという時限装置を仕掛けた格好である。これに加えて、2021年の夏場を目処に金融庁が資金交付制度を新設することで、統廃合に要する初期費用の一部を公助する仕組みも備えている。

これら2つの施策により、地域に貢献できる金融機関を創出するというのが菅総理の狙いとされ、図らずもコロナやネットバンキング利用の伸長といった事情が、各地銀の尻を叩いた格好となっている。

このような動きは当然、市中にも現出する。各所にある支店・営業所が大幅に減るということだ。地域の金融機関は主要駅前や幹線道路沿い、商店街界隈などの好立地にあり、ここが空き物件となれば相当に”目立つ”ことになり街の景観も大きく様変わりすることが予想される。信用金庫もそうだが、地域住民や店舗経営者の中には日常的に地銀を利用している人も多く、つまりは前述したようなリテール業種店舗の廃業と相まって、表題にもある通り地域住民の”生活導線”が変化する可能性があるだろう。

具体的には、例えば夜時間帯の動きとして、職場や外出先から地元駅に戻って来た後に駅近くのショッピングセンターや商店街で買い物をしたり繁華街で食事をした後に行き付けのパチンコスロット店に足を運んでいた人たちが、そのような行動パターンをとらなくなる可能性。或いは、地元界隈で何らかの消費活動をしようと思っても、人通りが閑散としており営業店舗も大幅に減ったとなれば、寄り道や外出の意欲すらも減退するという可能性である。

実際、ホール営業の現場目線ではそういった”ついでに”立ち寄ってくれた風な地域住民を多く見掛けるため、仮にこれまで消費意欲を持って街を出歩いていた人たちが減ってしまったり帰り道を変更するとなれば、地元のホールにとって営業面でまずは外見上の滞在客数減となって見てとれるようになる。娯楽に興じる場所が閑散としていれば追って入って来ようとする人の入店意欲も減退するのは道理であり、当然それは営業数字のダウン幅となって表れて来る。

そういった意味で、冒頭で述べた通りホールの営業立地を区分するにあたり「繁華街・商店街」に属しており、従来的な考え方では常日頃から適当に人通りがある界隈なので適当数の稼動は得られるだろうと目されていた店舗であっても、この先ワクチン接種が奏功してコロナ禍が落ち着いたとしても地域の姿が変容すること自体に抗うことは出来ずに、営業数字をもうひとつ下の水準に落とす可能性もあるだろうと述べて本稿を締めさせていただく。

楽太郎

Posted by 楽太郎