繁華街・商店街が廃れれば地域住民の生活導線も変わる
ホールの営業立地条件を分析する際には、まずは「大都市部」「中都市部」「小都市部」のように商圏規模で分け、その後「ビジネス街」「学生街」「繁華街・商店街」「ターミナル駅前」「郊外・ロードサイド」「郊外・駅前」などのように区分していく場合が多い。
「繁華街・商店街」をそのように有らしめる要素としては当然、飲食店をはじめとしたリテール(小売)業種のリアル店舗型営業施設が一定区域内に多数・多様に存在しているということが挙げられるが、もうそろそろ丸一年が経過することになるコロナ禍において、まさにこの繁華街・商店街にマイナス影響が直撃した格好だ。
直近で日本フードサービス協会が発表した2021年1月の外食産業の売上高は前年の同月比で実に21%減という数値であり、特にファミレスと居酒屋・パブなどの店舗がより大きなマイナス幅となっていた。また日本ショッピングセンター協会調べになる「SC販売統計調査報告 2020-21年 年末年始販売統計調査報告」を参照すると、年末年始(12月28日~1月3日)期間における前年同期間での対比数字は売上高がマイナス28%、レジ客数がマイナス27%、客単価がマイナス2%となりいずれの指標でも厳しい結果となっており、1,000~2,000名水準という非常にインパクトがある新規感染者数の報道が世の中に与えた影響の大きさが数字として表れたと言えるだろう。
駅ビル・ショッピングセンター・繁華街・商店街があるからこそ保たれているという地域は全国各地にとても多く存在しており、外出自粛傾向の強まりと地域住民の購買意欲の低下により街自体が死んだような雰囲気に包まれている地域も出て来ているものと推察する。
実際、東京のような都市部であっても時間帯によっては、古い歴史を持ち”~銀座”などと称する商店街や、TV番組などでよく取り上げられる渋谷駅前の一角や新宿の飲み屋街、池袋のサンシャイン通り、”高齢者の原宿”としてお馴染みの巣鴨、従来のアメ横に加えここ十数年間で屋台型店舗が多く出店したことで観光客の立ち寄りが急増した上野など、人通りが多い雑多な界隈として認知されていた繁華街・商店街ですらも本来の活気を失っている状況である。
もちろん、先に紹介したような統計上の売上減や、時短・休業によりシャッターを下ろしている店舗数が増えているという目に見えることだけで、その業種・店舗の今後も極めて危ういものになる、という見通しになるかといえば必ずしもそうではない事情がある。時短要請への協力金の存在があるからだ。個人経営の手狭な居酒屋やスナックなどは、資金遣り繰り上フルタイム営業するより助かっているという場合もあるだろう。しかし、店舗維持に対するこの協力金の貢献度を個別に計るのは不可能であるため、ここでは割愛する。
街の姿の変容について、意外な他業態においても傾向として出て来ている。金融機関の支店・営業所の統廃合によるものである。これはコロナが直接的に影響したというよりは、コロナによって変容が加速したという表現の方が適切だろうか。
店舗削減の動きは、まずメガバンクで見受けられ、特に三菱UFJ銀行は515店舗(2017年末時点)のうち2023年までに4割を減らすという思い切った方針を発表している。他行においても、統廃合はもちろん窓口を閉鎖してATM設置のみに変更したり小型店舗に置き換えたりといった具合いに、大規模な見直しを図っている最中である。
また、地方銀行においては、より一層の変化の途上にある。これには、菅総理が元から公言していた政策のひとつである”地銀再編”が影響している。この再編計画の内容を端的に言えば、まずは準備段階として赤字経営や経費率の上昇に苦しむ地銀・第二地銀同士が合併して仮に同一の都道府県内において市場シェアが上昇したとしても、それに対して独占禁止法を適用しないという特別措置を講じる期間を設けたことが挙げられる。この期間は2030年までとなっており、つまりはそれまでに自行の在り方を見直すべしという時限装置を仕掛けた格好である。これに加えて、2021年の夏場を目処に金融庁が資金交付制度を新設することで、統廃合に要する初期費用の一部を公助する仕組みも備えている。
これら2つの施策により、地域に貢献できる金融機関を創出するというのが菅総理の狙いとされ、図らずもコロナやネットバンキング利用の伸長といった事情が、各地銀の尻を叩いた格好となっている。
このような動きは当然、市中にも現出する。各所にある支店・営業所が大幅に減るということだ。地域の金融機関は主要駅前や幹線道路沿い、商店街界隈などの好立地にあり、ここが空き物件となれば相当に”目立つ”ことになり街の景観も大きく様変わりすることが予想される。信用金庫もそうだが、地域住民や店舗経営者の中には日常的に地銀を利用している人も多く、つまりは前述したようなリテール業種店舗の廃業と相まって、表題にもある通り地域住民の”生活導線”が変化する可能性があるだろう。
具体的には、例えば夜時間帯の動きとして、職場や外出先から地元駅に戻って来た後に駅近くのショッピングセンターや商店街で買い物をしたり繁華街で食事をした後に行き付けのパチンコスロット店に足を運んでいた人たちが、そのような行動パターンをとらなくなる可能性。或いは、地元界隈で何らかの消費活動をしようと思っても、人通りが閑散としており営業店舗も大幅に減ったとなれば、寄り道や外出の意欲すらも減退するという可能性である。
実際、ホール営業の現場目線ではそういった”ついでに”立ち寄ってくれた風な地域住民を多く見掛けるため、仮にこれまで消費意欲を持って街を出歩いていた人たちが減ってしまったり帰り道を変更するとなれば、地元のホールにとって営業面でまずは外見上の滞在客数減となって見てとれるようになる。娯楽に興じる場所が閑散としていれば追って入って来ようとする人の入店意欲も減退するのは道理であり、当然それは営業数字のダウン幅となって表れて来る。
そういった意味で、冒頭で述べた通りホールの営業立地を区分するにあたり「繁華街・商店街」に属しており、従来的な考え方では常日頃から適当に人通りがある界隈なので適当数の稼動は得られるだろうと目されていた店舗であっても、この先ワクチン接種が奏功してコロナ禍が落ち着いたとしても地域の姿が変容すること自体に抗うことは出来ずに、営業数字をもうひとつ下の水準に落とす可能性もあるだろうと述べて本稿を締めさせていただく。
ディスカッション
コメント一覧
拝見させていただきました。
まさか、わたしの適当なつぶやきを記事化していただけるとは、感謝感激…です。ありがとうございます。
そもそも私がなぜ興味があると言ったのかと申しますと、まさに楽太郎さんが本文で触れられているように、繁華街・商店街にカテゴライズされる場所に、私が6年ほど住んでいたからです。
諸事情あり、今はその商圏の隣駅、そこはターミナル駅ですので、また違った商圏となりますが、電車で3分の位置ですから、私の感覚では地続きの商圏なのです。(実際には違うと思いますが)
個人的に色々嫌な思い出もあり、踏み込みたくは無いものの、今のターミナル駅商圏と比較してもなかなかどうしてぱちんこ屋さんが元気な場所でして、6年そこでお世話になったこともあり、すっかり足が遠のいているものの、個人的に気にはなっているという次第です。
その商圏は、私が住む神奈川県には珍しく、東京に近い都市部にも関わらず、大規模な商店街が駅から直結で展開されています。
駅、そしてその商店街を中心に、パチ屋さんが半径500m内に5店舗あり、それはそれは楽しい環境です。
今回の記事を拝見し、私が思っていたことが、やはりそうなんだなと、教えてもらえました。
その5店舗のうち、一番好きなお店が、40玉のまさに商店街のど真ん中にあるもっとも歴史あるお店なのです。
もちろん、同じく記事内に触れられていた地銀や信金もあり、小売、飲食のお店が山ほどあるのです。
正直言って、今お邪魔して勝てるお店かと言えば控えめ目に言ってもそうとは言えず、しかし、大好きなお店…。トイレに「当店はお客様の遊技について、一切ノータッチです」と謳っている優良店なのです。小賢しくいくら増やしても、一度も注意されたことは愚か、カットインの気配、いや、店員さんの視線さえ感じたことがありません。
私はそのポリシーを貫く姿勢が好きですし、だからこそ、こういったお店は出来れば長く長く存続して欲しいと思います。
元々人の多い土地ですが、記事で書かれている通り、このコロナの影響、そしてそれに後押しされる格好で地銀や信金の統廃合が加速し、この商店街が廃れ、このパチ屋さんが無くなるというのは、なんとも寂しい話だなと思う次第です。
コロナの発生を含めた、これが時代の変遷だと言われればそれまでかもしれませんが、だったらよっほど改札出た目の前の大手さんの方が…ごにょごにょ……
と、素人の駄コメントでした。
楽しい記事を改めてありがとうございました!
これからも陰ながら応援しております!
銀行支店の統廃合については、コンビニATMの普及も影響してますね。地方のお年寄りは益々困ります。昨年はラーメン屋さんの倒産件数が過去最高だったとか。外食チェーンも店舗の統廃合が進んでますから、益々商店街は廃れて行きますか。
パチンコ屋さんの店舗数は9千件を割る勢いで減っているそうですが、遊技機の設置台数は全盛期と比べても2割も減ってないとか。パチンコ屋さんは大型化が進み、薄利を台数で補う時代になったと思われ、機械の高騰化からしても駅前であっても小規模店では生き残るのは難しくなってきたんでしょうね。こうなったら低貸し禁止にすれば良いのに。全て4円パチンコと20円スロット。それが生き残る方法かも知れません。