役物抽選機を積極的に導入して、地域ユーザーの選択肢を多様化せよ

2021年2月3日

マルホン工業が鋭意開発し、かねてより保通協の型式試験に持ち込み中であった新作天龍が適合するのを待っている。一般的な新機種における公安委員会との遣り取りや社内準備の日程等を考えれば、適合が報じられてから2か月後には導入が進むことになるだろう。

業界内では開発段階のデモ機を元にした情報が出回っており、他のどの機種とも似ていない(すなわち初代天龍とも全く異なる)新たな役物抽選機構を搭載した造りに期待が寄せられているが、ここで詳細を述べることはユーザー側の読者が登場を楽しみにする気持ちを損ねることにもなろうかと思うので、同機のことについてはこのくらいに留め置き本題に移る。

このところTwitterのタイムラインを眺めていると、1月12日から全国導入が始まっているPスーパーコンビやPワイルドロデオについて、「他のユーザーが思い思いに収録・撮影してupした動画や画像を見ていると自分でも打ってみたくなるが残念ながら生活圏内に設置店舗が1軒も無い」、「あっても”ボッタ店”だから運用に期待ができない」というようなツイートを多く見掛ける。

まずこれらの設置状況について。直近の役物抽選機として昨年12月1週目から導入が進んでいるPパイレーツオブダイナマイトキングも含めてP-WORLD上で確認できる各機種の設置軒数をエリアの営業軒数が多い6都道府県を選抜して左からエリアの登録店舗数・各機種ごとの設置店舗数(エリア内シェア)としてまとめると下表のようになり、やはりコンビとロデオの設置が少ないということが確認できる。

軒数Pスーパーコンビ7500Pワイルドロデオ6750Pパイレーツオブダイナマイトキング
北海道40921(5%)13(3%)54(13%)
東京65059(9%)31(5%)123(19%)
神奈川44534(8%)11(2%)66(15%)
愛知44914(3%)30(7%)102(23%)
大阪60936(6%)18(3%)70(11%)
兵庫35514(4%)5(1%)28(8%)
全国合計8,048457(6%)241(3%)1,242(15%)
参照:『P-WORLD』 ※2021年2月1日時点

「役物抽選機とは何か」を突き詰めて考えると、私のような旧世代寄りの業界人からすれば「アナログ要素が大当たりに直結したりラウンド継続等が決定的に左右される機種」ということになり、元々のイメージとしては”羽根物”である。

では、ダイナマイトキングは違うのではないか、一時期シェアを上げたいわゆる”餃子型”の抽選機構(=飛び込み後は左右ルート振り分けならびに回転体&可動皿による干渉を受ける構造)を有した機種も違う、ということになり天下一閃、天龍、トキオ、ウルトラジャンボ、カツ丼、コンビのようなものでなければ純粋な役物抽選機ではないというジャンル分けが成り立つが、最近だとアナログ要素が大きければ取り敢えず役物抽選機というジャンルに放り込んで論じても構わないという風潮があるため私自身はそれに準じるようにしている。

しかしそう考えると、初当たり確率や出玉を得るまでのフローだけ見ればミドル・ライトミドルタイプ機に該当するはずの蒼穹のファフナー、ロードトゥエデン、鳳凰、真釈迦RUSHのようにゲーム性のメインにあたる抽選はデジタルで、いわゆるRUSH突入や継続抽選等を役物で、という機種でも役物抽選機に該当するのだろうか、などと話が拡がって来るが、ここではジャンル分けを論じたい訳では無いので話を展開しない。

次に、しばし同一視されている役物抽選機=”一発台”という括りについて。これも「一発台とは何か」をそもそも論で語れば「1発がV入賞することで数千個水準のまとまった個数の獲得契機となるジャンル機」ということになる。

より細かく見るとまずは、まとまった個数を得るためのフローとして1980~90年代の大当たり1~3回セット物や旧3種にあたる”権利物”に対して極端な釘調整を施したものが1発台と定義し得る。

また、横っ飛び或いは天釘直下に飛び込ませる構造・回転盤型のV入賞構造・クルーン等の構造等を有し数千個の獲得契機となるジャンル機が該当し、こちらが本筋の1発台と言える。

後者について、オールドファン向けに適当に機種を列挙すれば、レインボー(平和)、アトム(三星)、カップイン(ニューギン)、パンドラ(奥村)、アルファー(豊丸)、ベータ(ニューギン)、キャラバン(マルホン)、ビッグウェーブ(三共)、メガトロン(藤商事)、スペースシップ(竹屋)、ファミリー(大一)、ジェットライン(西陣)、バズーカ(銀座)、セイヤ(三星)、ジャスティ(西陣)、フェアリー(京楽)などが挙げられるだろうが、好き嫌いや世代によって顔ぶれには大差が生じるだろうからこの程度にしておく。

ここで本題に戻って、役物抽選機の設置店舗数が少ない、ということについて理由を述べるとまず第一に、釘の運用が難しいという店側都合に依るもの。第二に、非液晶機の”地味な”ゲーム性が今の若い客層に合わず適当な売上・稼動が得られないという考え方に依るもの。第三に、不正行為の対象になり易いのではと考えて及び腰になってしまうこと。これら3つが挙げられる。

本稿では、この中でも特に役物抽選機のシェアが控えめなものに留まっている原因として考えられる、第一に挙げた「釘の運用が難しい」ということについて述べたい。

このことは、直言すれば「半分正しく、半分はただの思い込み」である。そしてその思い込みの正体は、業界内で「役物抽選機の扱いはとても難しい」と巷談されていることと、前述したように役物抽選機=一発台という必ずしも正しからざるイメージ、そして一般的な既存の導入店舗の多くが”無難な”釘の状態で運用し過ぎるという3点である。

まず釘の取り扱いについて。詳細に述べにくいご時世になったが、業界人読者が多いというブログ性質上敢えて詳述することで、自店でこれまで全く導入して来なかったが、そこまで面倒でないのであれば是非試しに入れてみたいと考える同業者が一人でも増えればという思いで解説する。

まず、役物抽選機の釘の取り扱いは、いわば”釘師の職人仕事”と言えるような腕前が無ければ困難極まりないものなのかについて。結論から述べると、最も難易度が高いと思われている天下一閃、天龍、コンビのような純粋な役物抽選機ですらも、パチンコ機の運用キャリアが浅い者であっても十分に自店の営業バリエーションのひとつとして活用することが可能である。

「バリエーションのひとつ」と付言したのは、まとまった台数を導入してメイン機として扱うにはそれ相応の機種特性理解度や技術を要するが、1・2台程度であれば過度に警戒して臨む必要はないという意味である。

では、どのようにして活用するのか、キャリアが浅い者向けに助言すると①動かす釘の本数は可能な限り少なくする(当然、釘確認シートの範囲内で行う)②メーカー営業マンとの関係を密にしデータ提供を受ける③ごく短期間での粗利の上下に影響されず長期間設置を念頭に置いてじっくりと向き合う。これに尽きる。

①については、羽根物もそうだが動かす釘の本数が多くなるほどに、どの釘が効いて数値が上下しているのか判別・分析しづらくなり、仮に粗利が取れていない場合に際限なく色々な箇所の釘を動かすことで収拾がつかなくなるからである。扱いに困った際には一旦納品時に近い状態に戻すというのは鉄則であるが、最初からなるべく動かさないようにすれば後々の要らぬ惑いを回避できる。

例えば、横っ飛びさせるタイプの飛び込み口を有した機種―――最近ではコンビを念頭に置けばよいが、同機であれば熟練者目線で見れば動かすべき箇所は飛び込み口と一般入賞口しかない。具体的な本数は、飛び込み口の上釘1~3本(”効く”のは命釘の上釘1本だが、移動幅を揃えて見た目を綺麗に整える目的で何本か動かす場合もある)と、いわゆるアゴ釘(命釘の下釘)1本。また一般入賞口は6~9本、といった具合いである。これはベース値をどの程度にするか店舗により考え方に大差が生じるため明言まではできないが、一般入賞口を締めるか・開けるか・無調整か、それぞれに理由や効果があるためどの手法が自店ならびに自店の客層にマッチするのか選択することになる。

旧世代の常連客や専業等の「飛び込ませるタイプの機種の遊技感覚(千円あたりの飛び込み個数、現金投資ペース等)を解っている客層」が多いのであればベースは低めにして適当数の飛び込み数を担保する方が良く、その反対に自店では非液晶機(ドラム、セグ、ドット機含め全般)の機種の動きが悪いような場合には通常時に適当な個数を一般入賞口で拾わせた方が投資ペースを抑えてより長く台に向き合ってもらえる場合があるが、これは如何せん店舗ごとに営業環境や遊技客の属性・動向が異なるため機種選定以前の問題としてまずは自店のことをしっかりと把握する必要がある。

最近では役物抽選機を1回交換や定量制で運用して成果をあげている店舗も増えて来ており、そういった営業形態があるということが若い年代のユーザーにも認知されつつある。そのため、これまで自店では4円パチンココーナーは全て無制限での営業形態をとっていたとしても、新たな施策として1回交換や定量制で運用するコーナーを新設するのも選択肢のひとつとして考えても良いだろう。

ある程度計算が出来るユーザーであれば、千円あたりの飛び込み個数や役物抽選確率・払出個数・遊技時間などを総合的に考えて夜の遅い時間帯からでも弾いてくれるようになったり、持ち玉遊技ではなく一旦リセットが掛かり再び現金売上が得られるという点で店側にも安心感が生じそれなりの運用レベルを維持することが可能になるが、一部の都道府県ではこのような特殊な営業形態は暗に”遊びやすい釘の状態にしている”と示したり他のコーナーと殊更に差別化しようとする意図を勘繰られて実施すること自体が不可となっている場合もあるため、方面遊協や所轄への事前確認を要する場合もあるので注意されたい。

また、専業層が張り付いた際の対処をどうするか、事前に決めておくのも肝要である。計数後に連続遊技して良いのか、それとも計数チケットは3枚までとしたり店側の随意で一時的に”打ち止め”にするなどの対策を講じた場合にはスタッフによる計数対応が増える以外にも手間が掛かることになるが、1回交換・定量制の導入メリットと天秤にかけて自店にとって最良の選択をされたい。

そして②と③については、導入当初は特に、他店舗から提供を受けた同機の営業データを豊富に有しているメーカー(営業マン)からのフォローを受けることで交換個数や設置傾斜ごとの数値の違いに触れ、自店のそれが適正か否か客観視すると良いだろう。営業数字の管理にあたっては、これはデジパチの運用にも通じるがほんの数日間の粗利の上下に一喜一憂せず、運用レベル・理論(設計)上の数値・日々の営業数字の推移を元にした適正値をしっかりと見極めて、長く贔屓にしてくれる客層を生み出せるように尽力されたい。

そうすることで、先に述べたように役物抽選機=まとまった個数が一気に出る”一発台”という必ずしも正しからざるイメージに起因する言わば”恐怖感”によって導入に及び腰になってしまうことと、既存の導入店舗の多くが過剰なまでに”無難な”釘の状態で運用し過ぎるためユーザー目線ではとても打てた状態ではなくなってしまい早期に稼動を飛ばしてしまうという問題解決の一助となる。

また不正行為の存在については、無制限スタイルではなく計数の度に遊技が中断される1回交換や定量制にすることで行為に及ぶ輩の来店・遊技自体を牽制することができる。或いは無制限スタイルを選択したとしても、常に衆人環視のような状況になる場所に設置するなどすれば行為に及ぶ心理的なハードルを上げることができ、また仮に不正を実行されたとしても察知を早めることができる。平時の台清掃がコロナ禍にあっては除菌清掃へと変わっていることも、遊技台・遊技客の近辺にスタッフが出向く頻度が増え滞在する時間も長くなっているという観点で、不正行為への牽制となるだろう。



最後に、役物抽選機を導入することのメリットについて述べて締める。

まず、運用にあたる者のパチンコ機運用に際しての営業データの捉え方や遊技客動向の分析・解釈の仕方が多様化することと、釘の見方や調整精度の向上が見込める。例えば、良稼動していたとしてもその稼動の中身が一般客なのか専業層なのかによって残る粗利が変わってくるのはデジパチと同じであるが、その際の数値の差はどの程度で、そのままの運用レベルで据え置いて良いのかそれとも専業者を”剥がす”必要があるのか、その方法はどうするか、釘でやるのか営業スタイルを変えるのか、といった具合いにである。

また、売上・稼動不足の場合に釘の見た目を良くすることで回復を試みる場合もあるだろうが、自分では上級者だと思っている専業者の大多数は実際にはそこまで精度が高い釘読みができない中級者であるため、彼らを視覚的に”騙して”打たせたり或いは打たせなかったりする方法についても工夫するようになる。

活字化すると至極簡単なように見えても実際に導入するのは勇気がいると思うのであれば、まとまった個数が出ないタイプの機種、例えば羽根おそ松やスカイレーサーのようなもので”練習”しても良いだろうし、粗利の上下動が必ずしも釘に依らずデジタル抽選によるスランプが大きい機種、例えばワイルドロデオなどを試しに導入してみるのも良いだろう。近隣に設置店舗が少ない場合には導入すること自体が差別化になったり、他店と運用レベルを比較されにくいため仮に当初の運用レベルが悪くても適当に稼動する場合もある。

ただひとつ、やってはいけないのは、前述したように過度に”無難な”運用をしてしまうことである。日によっては売上=粗利になるような場合もあり、これに味を占めて稼動などはどうでもよく単なる賽銭箱のような扱いになってしまうのは往々にしてよくあることだが、これは避けたい。次に導入する役物抽選機の動きが悪くなるからである。

ホール側が今よりも同ジャンル機を積極的に導入することで、地域ユーザーにとっては遊技台選びの際の選択肢が増えることとなり、また今のように非液晶機の新機種販売が容易では無い時代でも”1発の重み”を主眼とし果敢に開発に挑むメーカーの姿勢をフォローすることになり、それが後発機開発の下地にもなる。

ホールが多様性をもって存続していくために、アナログ要素がある機種は”必要”であると述べて、本稿を締めさせていただく。

楽太郎

Posted by 楽太郎