信用金庫の担当者との再会に際して

2021年1月15日

昨年5月末から全国でホール営業が本格的に再開し、さあこれからどのように従来水準の稼動に戻して行くか、それにはどのような施策が必要でどの程度の期間を要するのか、陽性者数はどのように推移しリアル店舗型施設の営業は”アフターコロナ”となるか”ウィズコロナ”の取り組みが必要なように大きく変容するのかといったことが盛んに話題に上がるようになった。

その頃の話なのでおそらく6月中旬あたりだと思うが、私は公式にかお忍び的なものかは分からないが自社の不動産事業部との関係で来訪していた都内の某信用金庫の担当者と応接室前で偶然顔を合わせ、面会相手だった常務が到着するまでの”場繋ぎ”の役割も兼ねて10分ほどだが互いの近況について話し合う機会を持った。

実年齢よりも幾分か若く見える青色のスーツに身を包んだ担当者がまず第一に気にしていたのは、総叩きに遭ったぱちんこ業界の”被害状況”だった。GW真っ只中の5月初旬時点でのホールの休業率は98%水準となったことを踏まえて、4月初旬に発令された緊急事態宣言から営業再開までの1か月半ほどで業界が被った損失粗利がどの程度になるのだろうか、という話になった。

正確な数字に基いた回答は出来ないが、と前置きしつつ「業界マクロデータとして、全国ホールの年間売上高の15%水準にあたる約3兆円という年間粗利が基準としてあることから、かなり大雑把に丸1ヵ月ちょっとで試算すると2,500億円以上の損害、逸失粗利にはなるかも知れない」と応えた。

もちろんこれは全国の全店が1ヵ月半に亘り完全に休業して、季節ごとのトレンドなども全て無視して全体数字を12で割り算して導き出した乱暴なものであるため、より実態に即した数値が必要な読者各位は権威ある調査研究機関や分析に長けた業界メディアが試算したものを参照されたい。

また業界としては、本来であれば漸次進行中である規則改正に係る新規則機への入替ならびに禁煙・分煙化がもたらした影響について、”どの程度のマイナスになるものか”しっかりとデータ化して把握したかったのが、全世界規模の厄災に際し試算することすらも困難になってしまった、という話をした。すると先方から「ぱちんこ業界は、産業全体に対して影響が生じるような変動要因が多く、またそれが訪れるスパンがとても短いようなイメージがある。そこに来てのコロナ禍での休業要請という仕打ちは酷過ぎる」と言っていた。

信金は、地域の個人商店からそれこそ小規模パチンコ店まで幅広い業種を顧客として抱えているため、融資や渉外部署の担当者が顧客付き合いしやすいように産業・業種別の資料などを収集する部署を本部に設けている。当然貸したお金は返してもらわねばならない訳だから、担当する配属地域(”上野グループ”のように細分化される)の個人商店で”危ない”と判断したり申し出を受けた際には半ばコンサルタント・アドバイザーのように接する場合もある。今後の担当顧客の資金繰りの悪化と自らの業務職責の重みが増すことを予見してか、彼は最後に「これから大変です。本当に、大変です」と2度繰り返した。

その後のホール営業の様子は主要なホール営業データが示す通り、営業再開後は大体7月第一週までは着実な稼動回復傾向を見せたものの、東京都において新規陽性者数が200名水準を記録し後々”第二波”と区分される7月第二週に入ってから頭打ちの様相を呈した。エリアや店舗によっては、従来であれば営業数字作りにおけるボーナスステージにも還元対象日にも設定し得る土日・祝日の集客(この場合”稼動時間”と換言して良い)が平日のそれと大差無くなり、特にパチンココーナーにおいては何なら緩やかに下降するかのような危うい気配すら見せていただろう。だが、まだ当時であればスロットコーナーにおいて旧規則メイン機が存在感を放っていたため、全体的な営業の見た目としてはどうにか保たれていたと言える。

この第二波の渦中でもホールが適当な営業を出来ていた背景としては、まずは感染拡大防止対策の遂行によりこれなら遊技環境としては必ずしも悪くはないだろうと判断したリスクを取れるユーザー層が来店してくれたことと、7月初旬時点で給付率が6割を超えていた特別定額給付金の存在、偶数月にあたる6月の中旬に年金が支給されたこと、そして何よりも自粛に飽きた層が娯楽を求めて街へと出て行ったことが挙げられるだろうか。

更に日を追うと、パチンコにおいては韋駄天に代表されるように新機種販売の台数・質・バリエーションのいずれも改善の流れに乗り、他方スロットコーナーでは型式試験の状況(抽選、適合率)が思わしくない中でサラリーマン番長をはじめとした旧規則メイン機が設置期限切れを迎え、ゴッド凱旋が姿を消して行く最中にあった11月11日に都内では8月20日以来となる新規陽性者数300名超えとなった。これ以降は、じわじわとその数を増し、今まさに”第三波”の渦中にある。



こうした流れで新年を迎え緊急事態宣言の再発令で一時緊張感が増したものの、特措法による休業要請という悪夢の再来まではならず、また時短営業に応じる法令上の必要性や義務までは負わずに済んだ1月中旬の今は、直近での稼動回復のピークであった2020年11月中旬と比較すれば目も当てられないような低水準の営業状況になってしまっている。

しかしそれでも、「休業せずフルタイム営業が出来ているだけ、まだマシだ」と考えて前を向いてホールに立っている同業者が多いことと思う。私自身もその一人だ。業界として撤去すべき旧規則機は撤去し、対外的な広告宣伝・告知等はほぼ全面的に自粛し、20時以降の店外照明や大型モニタ類は使用せず、粛々と営業している。

こうした中で今日、実に約半年ぶりに前段で紹介した信金の担当者と偶然にも本社にて再会することとなった。

年明け直後から個人事業主、特に飲食店の顧客ケアで忙殺される日々を送っているとのことで、少し疲れているようにも見えた。それでもこちらの近況を案じてくれ、緊急事態宣言はおそらく長引くだろうこと、状況が悪化してパチンコ店が再び休業要請の対象業種とならぬように祈るということ、そして最後に「顧客訪問すると、雰囲気が落ち込んでいたり表情が厳しい方も多い中、こちらは本当に皆さん明るいので有難い」と言った。

期せずしてこれは私自身が常々気を付けていることで、エンタメでもアミューズメントでも娯楽でもどのような言い方や括りでも構わないが、お客さんを迎え入れる業種である以上、いつ来店していただいても営業姿勢は一切変わらず出来るだけ楽しい時間を過ごして勝ったり負けたり出したり飲まれたりと遊技に興じていただきたいと考えている。

そのためには、いつ何時でも話し掛け易いような雰囲気でホール現場に立ちたいと考えており、この会社は訪問するといつも明るい雰囲気だと言って貰えたことで、最大級の評価を受けたような気持ちになれた。

楽太郎

Posted by 楽太郎