「もうひとつの撤去問題」について-使用済み遊技機の適正排出・リサイクルを

ホール4団体(全日遊連、日遊協、MIRAI、余暇進)は2020年10月19日、旧規則機の自主的な撤去の取り組みとしての21世紀会決議を遵守していないホールを通報・事実確認できるシステムの運用を開始した。このシステムにより把握された、決議内容に反する営業を実施していると思しき店舗の通報件数は運用開始から丸一ヶ月経過した時点で400件を超えており(同一店舗の重複カウントも含む)、相当数の”設置期限切れ”旧規則機がいまだ営業の用に供されている事を示している。

法令上の経過措置期限は機種ごとに訪れ、最終的には2021年11月末をもって全ての旧規則機が風適法20条に定める「著しく射幸心をそそるおそれ」のある遊技機に該当することとなりホールでの設置が違法となる。この撤去の過程で何台・何%が業界側が自主的に定めた期限内に撤去されず残存したか、また何法人・店舗が取り決めに逸脱したか、集計するに相応しい節目ごとに詳細な定点データが共有されることになるだろう。この当座の節目は多くの都道府県でゴッド凱旋が順次期限切れを迎えている11月末であり、次の節目は沖ドキも含む多くの人気機種がまとまった台数規模で期限切れを迎える1月末になると目されている。そしてその節目ごとに、遵守店舗が逸脱店舗を不公平感を募らせた目で見遣り、業界団体としては出て来たデータに足並みの不整合を嘆き或いは呆れ、まさに20数年前の”社会的不適合機”の段階的な撤去の時と同じ”撤去問題”として業界史に刻まれることになろうかと思う。

この撤去問題に際しての私のスタンスは一貫して、この業界の自主的な取り組みに則って粛々と撤去が実行されるべきであり結果的にはそれをもって”実績”とし、まずは内規としての有利区間撤廃の内諾を警察庁から得ることで既にホール営業の今後に大きな不安の影を落としているスロットコーナー運営状況の回復の一助とするべき、というものである。

多くのユーザーによる6号機拒否の傾向に頭を悩ませているホール職域の者の中には、IRの動きに呼応して目に見えるかたちで取り組まざるを得なくなった射幸性の抑制と依存問題対策を念頭に置いて設定された有利区間を撤廃することのハードルは相当に高いものであり、最悪の場合は11月24日から新たな情報が出て来ている管理・メダルレス遊技機の本格的な導入推進と”バーター”でなければ容易に見直しなど図れないものと悲観的に見通す向きもあった。

しかし、メーカーをはじめとした業界団体の水面下での動きも把握しつつ客観的にこの段階的な撤去を見守っている立場の方々からすれば、この内規の撤廃はそこまで重い事案ではなく、どこかの時点で高いパーセンテージでの自主的な撤去が成されていれば日電協は内規改定を警察庁との話の俎上に上げ、それはおそらく認められることになるだろうと見通している。

いずれにせよ、現行内規による型式よりもユーザー支持され得るスロット新機種がより早期に登場し、このままではパチンココーナーの片輪走行で営業バランスを崩すことが目に見えているホールの進路に文字通りの活路と安定を再びもたらすことを願うばかりである。この内規の撤廃は、メーカー側が高射幸性に区分し警察庁もその存在を憂慮している高射幸性スロット機の撤去は当然のこととして、沖ドキも含めたそれ以外の旧規則機をより早期により高いパーセンテージで外すという事が条件になると言え、つまりは前述した第二の節目である2021年1月末時点での状況が鍵を握るものと推察する。

前段までに述べた内容を、ぱちんこ業界が真正面を向いて取り組むべき、表の方で展開される撤去問題として位置付けるならば、業界の裏方業務として遂行されており普段はまず目立つことのない”もうひとつの撤去問題”も存在する。それは、規則改正以降どれだけ少なく見積もっても250から300万台規模で発生する撤去遊技機の適正排出ならびにリサイクルの問題である。

自主的な取り組みとしての撤去が段階的に進められる理由の第一には営業者たるホール側の負担の軽減と機械代の分散があり、第二に入替に要する新規則機の開発・販売の日程ならびに物量的な理由があるが、第三としてこの適正排出とそれに付随したリサイクルの処理能力も考慮しての理由もあるとして敢えて話題に挙げ、後段で私見を述べる。

まず、パチンコ機の適正排出とリサイクルについての正規のフローをごく簡単にであるが改めて確認する。

パチンコメーカー団体である日工組がエリアごとにリサイクル業者4社や収集・運搬業者を選定・認可して運用している日工組遊技機回収システムでは、全国のホールと販社からの使用済み遊技機の回収依頼を受けて各エリアごとの回収センターに集積された遊技機は再生処理会社により分解され、それらの部品のうち再利用可能なものは仕分けされ各メーカーへと返却・販売される。このフローには3パターンある。まず「広域回収」は日工組が取得した広域認定範囲内で産業廃棄物として回収するもの、次に「下取り回収」はメーカーが指定した特定機種の回収を行うもの、そして「買取り回収」は再生処理会社が買い取った遊技台の回収である。いずれのパターンでも、最もパワーが掛かるのは再生処理会社による破砕分解・仕分けの工程(中間処理)であり、先に述べた4社合計での年間処理能力は最大で約150万台とされている。これは月間で均せば12.5万台規模という事になり、仮に3~5万台規模で設置されていたパチンココーナーのメイン機が同時期に2~3機種撤去期限を迎えそれらがまとめて処理工程に送られれば、これだけで業務はパンクするという計算になる。また、回収・運搬時の積み替えに使用する倉庫(回収拠点、回収デポ)の容量の問題もあり、エリアによっては当地のホールから撤去されたメイン機が短期間で集積されればやはりすぐにパンクしてしまう可能性が生じる。このことからだけ見ても、目下業界側が計画的な撤去ペースの目途としている月間15%という数値設定の妥当性が窺い知れるかと思う。

次に、スロット機の適正排出とリサイクルについても見て行く。スロットメーカー団体である日電協はリサイクル業者35社を選定・認可し、これらは前述したパチンコ機の再生処理と同様にパーツごとに適正に分解し各メーカーへと戻したり、素材資源として販売したり、熱回収(サーマルリサイクル)に充てるなどすることで、直近10年間のリサイクル率は平均して95%という非常に高い水準を維持し続けている。しかし、日電協加盟メーカーにおける使用済み遊技機の処理状況をやはり直近10年間で見ると最も多く処理したのが2011年(平成23年)の年間53万台規模であるため、今回の規則改正に係る撤去規模であるパチンコスロット合計250~300万台があるべきペースと台数で分散されなければやはりパチンコ機のそれと同様に業務パンクする危険性が高まることになると推察される。これに加えて、パチンコとは少し異なる事情も使用済みスロット機の適正排出には存在している。それはいわゆる”闇スロ”への流出防止である。日電協では既存のリサイクル管理票の運用と並行して、2021年(令和3年)8月末までの期限付きで回胴式遊技機売却・廃棄票の利用を推進している。これにより、設置期限切れで順次撤去が進む旧規則機がリサイクル業者へと適正に集まるようにし、賭博行為である闇スロ営業の用に供されることを防止している。

使用済みパチンコ・スロット機それぞれの適正排出ならびにリサイクル事情については、大雑把ではあるが上記の通りである。ここに更に、コロナ禍に際して感染拡大を防ぎつつ業務遂行するという極めて特殊な環境であることも加えて考慮すれば、如何に今年の業務状況が厳しいものであるか部外者であっても十分に理解できることと思う。

ここで視点を変えて、仮に適正に排出・リサイクルが成されなかった場合にどうなるかについて極端な事例をもって示したい。これには、業界の汚点とされる”野積み(不法投棄)”を振り返る必要がある。

1980年代以前にも全国各所で当地のホールや販社が大量に捨てたと思われるような遊技機の不法投棄事案はあったようだが、直近20年ほどで主立った事案を挙げればまずは1994年(平成6年)に埼玉県寄居町における野積みが一般メディアによって大きく報じられている。この約2万5千台の完全撤去には実に2年を要することとなったが、作業が難航した背景として当時は今のように十分な回収・処理能力を持った業者が少なかったという事情が関係しているとされる。

次に世間が問題視したのは、2002年(平成14年)に栃木県の鹿沼市と宇都宮市の山林で雨曝しのまま腐食した撤去台が野積みされていることが確認された事案である。これが業界による不法投棄としてメディアから挙って取り上げられた結果社会問題に発展することとなり、業界としては合計約21万台もの台数を早急に撤去せざるを得ない状況に追い込まれた。

その後も2003年(平成15年)に福島県双葉郡で約6万台の野積みが発見されるなど不法投棄は時折話題になり、しだいにより一層の環境保全への取り組みが世界的に議論されるような時代に入り温暖化や粉塵、排ガスなどの諸問題や省エネ関係の物事にも注目が集まるようになると、国内での使用済み遊技機の最終処理工程だけでなく業界としては意図せず中国やインドなどの外国へと運ばれているという疑いがある遊技機の存在にまで神経を尖らせる必要性が生じた。

この背景としては、パチンコスロット機に液晶画面が搭載されるようになってから取引価値が高いこの部品だけを抜き取って、それ以外の部分は捨てたというのが前述したような野積みの直接的な原因であったが、後年になると従来捨てられていた部分の”有効活用”を目論むブローカー的な者が登場し、彼らによって香港経由で中国へと流出したものが金属(レアメタル)などの部品取りの過程で粗雑な処理(基板からの特定金属の炙り出しなど)が行われたことにより発生した有毒ガスや鉛などの有害物質が周辺環境を害する事案が発生するなどして、業界側でもこれを問題視したことが挙げられる。これに加えて近年では、科学技術立国に成功したインドが台頭し多種多様な部材を求めているとされることからインド方面への流出の警戒感も強める必要性が生じていると目されているが、当該国における使用済み遊技機による環境破壊や社会問題の報道はいまだ見聞きしないというのが現時点での状況である。

過去の野積みや正規のルートから逸脱した遊技機の行く末の事例についてはこの程度の紹介に留め置くが、これらが単に一般メディアが騒いだことにより問題視され世間でパチンコスロット叩きの勢いが強まったというだけではなく、国民の声を代表する代議士が集うとされる立法府においても大変厳しい口調で問題視されたことがあるという事例を示して参考補足としたい。

私が想定読者としている若手の業界人や業界事情に明るいユーザー各位におかれても、普段はあまりこの手の会議録を閲覧する機会はないだろうから、幾分長くはなるが以下で2006年(平成18年)5月12日に開催された第164回国会 環境委員会における篠原 孝 氏(長野県第一区・小選挙区選出 立憲民主党→社民→無所属)と警察庁生活安全局長 竹花 豊 氏の遣り取りを引用する。

篠原氏「環境に優しい産業の一つの提案で、なぜこんなところに警察庁の方に来ていただいているかということですけれども、パチンコ業界。私は、パチンコ業界をなぜ例に出すかというと、こんなことを言っては悪いんですが、それなりにいかがわしい産業だと思います。余り役に立っているとかいうのはない、ただ、我々一般庶民の精神の安定にはなっていると思います」

「恥ずかしながら、長野県は娯楽が余りないので、ないというか、本当のもっと過激な娯楽があるんですが、そういうのはみんな禁止されているので、それでパチンコが物すごいのです。その庶民の楽しみを奪ってはならないと思いますけれども、パチンコ店は郊外にもうばんばんできているわけです。広い農地をつぶして、電気がこうこうとついて、広い駐車場というのがあるんですね」

「だから、パチンコ業界に少しは環境に優しいことでも考えてくださいということで、提案ですけれども、パチンコは風俗営業ということで、警察庁は規制という面からだけ取り組んでおられると思いますけれども、そこに例えば環境に優しいというのを入れるんですよ」

「どうするのかというと、こういうのは許可制にしてもいいんだろうと思います。風俗営業の許可だけじゃなくて環境上の問題もあるので、立地も制限する。ちゃんと余り優良農地じゃないところ、建てるんだったら屋根は全部ソーラーパネルにする、そして電気代は全部自分でやれ、その電気が消えたらもう営業をやめろ、これはちょっと極端過ぎますけれども。降った雨は全部トイレで流す、それから何ホン以下にするとか何ルクス以下にするとか、そういうことをぜひやってもらいたいんです」

「だけれども、これは不思議なことに、私が法令検索で調べたら、資源の有効な利用の促進に関する法律の中にパチンコのことが書いてあるんです。どういうふうに書いてあるかというと、やはり平成に入ってからの流れで、廃棄物の処理なんです。皆さん御存じかどうか、栃木県にパチンコ台が山のように廃棄物になっているところがあるんだそうです。いかがわしい人たちなんて言っちゃ悪いんですけれども、でたらめなわけです」

「だから、これは省令であるんです。ぱちんこ遊技機の製造の事業を行う者の使用済物品等の発生の抑制に関する判断の基準となるべき事項を定めるというものです。何かというと、もっと長く使え、修理して使え、これはなぜかわかりますね。いつも、一カ月に二回ぐらい、新規台購入で玉がいっぱい出るぞという誇大広告をしているわけです。だから、台を次々にかえている。これはよくないと言っているんです」

「ですから、廃棄物の処理という観点に気がつかれたのなら、もう一歩進んで、立地や建物のところまでちゃんと警察庁は面倒を見る、そういうふうにしてくれと環境省が要請してやるというような連携があってしかるべきだと思うんですが、警察庁、いかがでしょうか」



竹花氏「お答え申し上げます。御指摘のように、パチンコ業は、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律に基づきまして、都道府県公安委員会の許可に係らしめているところでございます。同じような遊技場営業、あるいは接待飲食等営業も、この法律に基づいて、善良の風俗と清浄な風俗環境を保持するという観点で規制をしているところでございますが、この中に騒音等に係る規制もございまして、この点は環境にかかわる規制にも効果を有するものであろうと思います」

「御指摘の温暖化の問題等について、環境の問題については、警察といたしましても大変大事な問題であると考えておるわけでございまして、環境基本法によりまして、パチンコ営業者を含めた事業者が同法の基本理念にのっとり事業活動を行う責務を負うているわけでございますので、警察といたしましても、この法律の基本理念について機会をとらえて業界に指導してまいりたいというふうに存じております」

「御指摘の、パチンコ営業の開設に当たっての土地の獲得あるいは建物の建て方等について、環境の観点から警察サイドにおいて規制を行うべきではないかという御指摘につきましては、これは他の風俗営業あるいは他の事業者等とのバランスもあろうかと思います。今後の検討課題にさせていただきたいと存じます」



篠原氏「今非常に優しい声で優しく答弁していただいていますけれども、いつものとおりびしばしやっていただきたいと思いますね、警察は。なぜパチンコと言ったかというと、ほかの業界というのがありました、しかし、そういうことを考えないパチンコ業界ですら環境にこれだけ配慮したことをしている、だからほかの業界はもっときちんとすべきだと。似たような業界でコンビニ業界がありますね。コンビニも、あちこち郊外にいっぱいできて、こうこうと電気を照らしているわけです」

会議録の引用は上記の通りである。

篠原氏の発言には非常に厳しい内容が見てとれ本稿で話題にしている適正排出・リサイクルについても栃木県での野積みが事例として挙げられているが、これを過去の出来事とするか、それとも今般の撤去が適正なスケジュールで遂行されない場合に全く同じではないにせよぱちんこ業界の風評に悪影響を及ぼす可能性もあると警戒するか、この認識や態度の違いによってこれから先の旧規則機撤去の取り組みにも違いが生じるように思う。

繰り返し述べるが、業界側が自主的な取り組みとして定めた撤去スケジュールには理由があり、これが守られなければ近年ずっと遊技機流通過程の最下流域で使用済み遊技機と向き合い、適正排出とリサイクル処理に従事している職域の方々を圧迫することになる。

この、もうひとつの撤去問題についても業界人であれば必ず念頭に置きたいところであると述べて、本稿を締めさせていただく。

楽太郎

Posted by 楽太郎