【取材・来店イベント】広告代理店とホールはどのような遣り取りをしているのですか?【公約・契約】

今回は、読者の方からのご質問にお応えします。

ご質問内容

aoi-nodaさんからのご質問(2020年6月4日)

楽太郎様にどうしてもお伺いしたいことがあり連絡させて頂きました。雑誌やネット媒体の来店、カラ取材などについてですが、あのようなのは営業を仕掛けるときに資料等は渡すのでしょうか?

あるのならやっぱり公約やギリギリを攻めるための裏技のようなのが書いてあるのですか?

ネットで見かけないのは罰則があるからだと思いますが。悪いのは全て店で媒体は何も違反していないということについて打ち手からすれば別にどちらが悪くても設定が入れば構わないです。が、今のように店が悪いという決まりならそれでいいです。が、媒体が悪くてとなると媒体の活動が無くなる可能性が出てくるのでそれは困ります。媒体が今後無くなる可能性はありますか?

回答

まずご質問を整理します。

①広告代理店等による営業資料は書面やデータ形式で存在するのか

②各種イベント開催時の公約や法令・規制逃れのための方策があるのか

③法令違反により広告代理店の存続や営業活動が危うくなる可能性はあるか

この3点です。

これらに順次、端的に回答して参ります。



まず①については、単発売りにせよまとまった期間にせよ金銭の授受と契約を交わす必要性があることから回答としては「存在する」というものになります。

ではその内容について文面を抜き出したり画像等で示すことが可能かといえば、著作権などに抵触するためこのような場では開示できません。

しかし、それでは回答としては材料が足りないため、今回はある現行イベントの具体的な内容について法令に抵触しないかたちで後段にて例示したいと思います。

次に②についてですが、広告代理店が提供するサービスとして用意しているイベント企画や媒体には、それを開催するホール側に対する縛りが厳しいか弱いかの違いはありますがいわゆる「公約」というものは確かに存在します。

これをホール側から履行してもらうことにより、企業としての広告代理店それ自体或いは企画や媒体としての雑誌・個々のイベント・イベント専用サイトなどはユーザーからの信頼を得て他のホールに対して営業する際の訴求力や集客効果事例にする訳ですが、実際に望ましい差玉数や差枚数が発生するかどうかは確率商売であるという性質とユーザーの遊技状況により上下するためこれを厳格に契約書(発注・申込書)に落とし込んで指定することまでは難しいことと言えます。

また、パチンコの運用レベルについては、イベント当日に使用する段階設定の割合指定等は可能でしょうが釘の状態を指定することは店側が明確な法令違反(無承認変更)を問われることになるためこれを契約書面に落とし込むことはできません。

しかし、スロットの当日運用レベル、つまり段階設定やその使い方(「塊で配置」など、機種配置を考慮した設定配分内容)を実質的に指定することは可能です。

もちろん、その通りに履行するか否かはホール側に一任されますし、例えば思わしくない営業結果になったため広告代理店側で設定表ではなく遊技台のドアを開放して設定キーを回して実際に使用した設定を確認することまであり得るかといえば、そのようなことはありません。

つまり、②の結論としては「公約やコンセプト(設定の入れ方など)の共有・指定はあるが、実際には口約束程度で済ませ、利用する企画・媒体ならびに開催日程と金銭授受の契約のみ双方で交わす」というのが一般的であり、仮にそれよりも事細かく規定したイベント内容にするには書面での相応の特殊契約が必要になりますがまずそこまではやらず、履行しなかった際には今後の取引を検討する、すなわち「口約束ではあるが公約を履行しなかった店舗として以後同じ企画・媒体は使用させない」といった風な取り決めをするのが一般的という回答になります。

また③については、過去記事でも度々述べていますが風適法およびその関連法規・条例(これらをまとめて「法令」と呼びます)は大部分が営業者であるホール側の営業上の義務や禁止事項等を規定する性質のものであり、今回話題にしている広告代理店やその企画・媒体、演者・ライター、ユーザーなどの行為について罰則を設けて規定するようなものではありません。

例えば、ホール営業に関して、善良な風俗環境の維持と青少年の健全育成という目的を成すため18歳未満の者についてはこれを「立ち入らせ」てはならない、ユーザーが直接的に遊技機のインターフェイスを操作することで技量が反映されそれをもって遊技であることを担保するためハンドル固定を「させてはならない」、営業所において客を宿泊・仮眠させたりまたは寝具その他これに類するものを客に「使用させない」こと、といった具合いに、仮に来店客が意図的に上記行為におよんだとしても取り締まりやその結果としての行政処分対象となり得るのは全てホール側ということになります。

今回の取材・来店系イベントについて焦点になることとして「著しく射幸心をそそるおそれ」のある営業行為か否かという点についても、射幸心をそそるおそれのある営業をしてはならないのはホール側であって広告代理店やその企画・媒体、演者・ライターではありません。

またユーザー側が(ユーザーに成りすました広告代理店等も含め)自主的に盛り上がって運営するwebサイト・SNSの発信内容は風適法の埒外にあることですから、これに対して取り締まりや処分など実行力を持った措置がおよぶ可能性はありません。

しかし、ホール側の営業状況と広告代理店やその企画・媒体、演者・ライターによる発信内容がかなりしっかりと紐づいていた場合において、イベント当日の営業実態と発信内容に齟齬や乖離が認められこれを証明できるような条件が整っていれば、風適法ではなく景表法において違法であるとすることが可能だと解釈されます。

つまり、虚偽広告として法令違反を問うという、いわば”別件逮捕”のような状況ならあり得る、ということです。

例えば、段階設定機能非搭載のあるパチンコ機種、具体的には「初代北斗無双が特に遊びやすい」などの広告宣伝をしておいて、その機種の釘の状態が前日までと全く変わらず実際に遊び易い運用状態になっておらず、しかもそのことを別営業日との釘の状態比較で証明できる場合などです。

つまり、釘に関しては取り締まり行政側が検定機とはみなせない(=照合ツールとしての「釘確認シート」から逸脱する状態)ような調整をすれば無承認変更で風適法違反となり、広告宣伝上では遊び易い運用(換言すれば「入賞を容易にした」釘の状態)で営業すると謳っておきながら実際には違っていた場合には景表法違反を問われる、ということになります。

この景表法違反の方は営業者であるホール側だけでなく発信を行った側も密接に関係している訳ですから、広告代理店やその企画・媒体、演者・ライターなどにもリスクが発生するということになります。

またいわゆる「晒し屋」についても、ホール営業との関係性が証明できればリスクが発生しますので、これらが発信する際に添えるデータ・画像類に関しては通常であればホール側でしか知り得ないような性質のものは使用しないというのが一般的かと推察します。

また、営業状況やイベントポスター類を画像で紹介する際なども、その画像は実際にはホール側が用意したとしても、あくまでもいちユーザーが現場に赴いて撮影した体で発信しないと関係性が露見する可能性が高まりますので、こういったことには細心の注意を払うというのが一般的です。



今回のご質問への回答としては、3点に分けて上記で述べた通りです。

補足解説

それでは、前述しておいた通り、広告代理店が絡んだイベントにおいてどのような遣り取りがなされているかを示すものとして、ある広告代理店とホール法人との訴訟事案をひとつ紹介したいと思います。

著作権法13条3号にもある通り裁判所の判決文は著作権の対象になりませんので、今回は直近年における広告代理店(原告)とホール法人(被告)との係争での判決文中に見られる説明を参照することで、①をはじめとした一連のご質問への回答の補足資料とします。

その際、原告と被告の企業情報や営業店舗、関係者情報、係争の経緯といったことについては詳述しません。あくまでも今回のお問い合わせへの回答の補足としてのみご覧いただきます。

より詳しい内容を参照希望の方は、お手数ですが文末の参照文献から当該判決文を検索して下さればと思います。

判決文の内容(一部抜粋)

「モバスロ」について

「モバスロ」は、これを導入したパチンコ店が、顧客のメールやラインのアドレス宛てに、「ただ今より『モバスロ』配信!」等と記載したメッセージ及びスロットゲームに誘導する画像等を送信し、顧客がゲームをプレイして「大当たり」となった場合に、特典として携帯電話用待ち受け画像等を含む当選画面を表示させることを特徴とする集客用のコンテンツである。

当選画面は、各パチンコ店において独自に設定することができ、様々な情報提供に利用することができるが、典型的には、「大当たりおめでとうございます!!」といった文章やカラフルな星印や矢印等と共に、特定のアニメのキャラクターとそのアニメの名称を記載した待ち受け画像を表示することで、これを見た顧客が、その特定のアニメに関連する機種が当日の推奨機種であると推測し、パチンコ店に出向くことを期待するものである。

「モバスロ」は、原告の看板企画として売上の約●(省略)●%を占め、原告が営業を開始した平成21年ころの販売開始以来、全国のパチンコ店数百店舗において導入されている。また、「モバスロ」は、類似の販促ツールの中で先駆け的な存在であり、その占めるシェアは約●(省略)●割であったが、「モバスロ」を導入した店舗のうち●(省略)●割以上が、特定の機種を示唆する画像を当選画面に使用しているとされる。

なお、原告以外が作成する「モバスロ」に類似するコンテンツは複数あり、いずれも、当選画面には、「当たりおめでとうございます。待受け画像を保存してお楽しみ下さい。」等の文章と共に、特定の機種を示唆する画像を表示することができる。



「美女コレクション」について

「美女コレクション」は、「モバスロ」の姉妹企画として、平成30年8月から販売開始された。同コンテンツは、「モバスロ」と同様、顧客のメールやラインのアドレス宛てに、「美女コレクション配信!」、「本日の美女は?」、「PUSH」等の文字を配して、ゲーム(ルーレットゲーム等、スロットゲーム以外の4種類)に誘導する画像等を配信し、当選画面に、「本日の登場美女はこの方々」等の文字及び女性の写真を表示させることを特徴とする集客用のコンテンツである。

当選画面は、各パチンコ店が独自に設定することができるが、画像により機種を示唆しようとする場合、パチンコ店は、特定の機種を示唆する格好をした(いわゆるコスプレ)女性の写真を原告より入手する必要がある。

原告の作成した「美女コレクション」の営業資料(甲6)には、「取り扱い機種(美女)の一覧」として、パチンコ・スロット台の機種が複数記載され、また、「美女の画像で機種示唆も可能!!」、「メイン機種を示唆する、女性の画像は弊社でご用意しています。」等と記載されており、当選画面における女性の服装や所持品等により特定の機種を示唆することができ、写真を見た顧客が、示唆された機種が当日の推奨機種であると推測して、パチンコ店に出向くことを期待できることが、同ゲームを導入するメリットであるとして宣伝されている。なお、同年10月当時、埼玉県内において「美女コレクション」を利用するパチンコ店はなかった。



その他の販促イベント等について

本件コンテンツやその類似品のような、顧客にゲームをプレイさせ、当選画面において機種を示唆することができる販促ツール以外の顧客誘引手段として、パチンコ店においては、「来店イベント」や「取材イベント」等と称し、店舗において企画やイベントを催し、その企画名、来店する人物の服装や配られる景品等により、当たりの出やすい機種を示唆するなどして顧客を誘引することが行われることもある。さらに、特定の機種を示唆するのではなく、顧客のメールアドレス等に対し、店舗情報等の配信を行う場合もある。

このような販促ツールや販促イベントに対する規制の厳しさは、各県により若干の差があり、「美女コレクション」の利用に際しても、店舗の所在地により、機種を示唆する画像を配信する店舗と、単に店舗情報のみを配信する店舗がある。



判決文中で埼玉県警担当官の見解(講習会での発言要旨)として記載されている内容

広告宣伝について

① 埼玉県の取締を今月から徹底的に強化すること

② 言い訳は聞かず処分すること、外部がそう感じる広告宣伝をしてはいけないこと

③ 店舗からメールでスロットゲームの配信を行い、そのスロットゲームに当選した人に対して、待ち受け画面をプレゼントという形で画像を送り、それにより機種を示唆するような行為は禁止されること

④ 同じようにゲームをして、当選した者に対し、女性が機種を連想させるようなコスプレしている画像を送って販促するものもあるが、これも同様に禁止されること

⑤ 取材会社が雑誌やウェブ上で、写真を掲載するなど店の宣伝をすれば処分となり、勝手に掲載されたというのは処分を免れる理由にならないこと

⑥ 店の中でスタッフが、機種を連想させるコスプレをする行為は禁止であること

⑦ 機種を示唆するものでなくても、特定日にだけ制服を変更し、変更に法則性があれば処分すること

⑧(筆者により省略)

※訴訟事案とする際に、この発言が具体的なコンテンツを念頭に置いたり名指ししたかについて原告(モバスロ等運営会社)が埼玉県警に問い合わせたところ、対応した職員は、この講習会においては「コンテンツの具体的な名称を挙げたり個人や業者を特定するものを使用したりはしていない」という主旨で回答しています。

※埼玉県警担当官が講習会においてこのコンテンツの名称には直接言及していないのに、講習を受けた当該店舗関係者がこれは「モバスロ」や「美女コレクション」のことに言及していると解釈して社内で情報共有等を行ったことについて、裁判所は店舗関係者の立場では担当官の説明は「コンテンツを特定して説明したと理解し得る内容であり、その理解も誤りとはいえない」「本件部分の文意も、行政処分の対象となり得るのは、本件コンテンツを利用して特定の機種を示唆する画像を送る等の行為であると理解し得るものであり、担当者の説明と齟齬はない」とした上で、県内において禁止されるべき広告宣伝行為および店側が利用するサービスとしてのコンテンツの例としてこの場では「モバスロ」と「美女コレクション」が名指しされたに等しいと判断しています。



今回のお問い合わせへの回答の補足としてご用意した資料(一部抜粋)は、上記の通りです。広告代理店とホールとの遣り取りの様子が窺えるかと思います。

以上、ご質問者様にとって十分な回答になれば幸いです。

___________________________

[参照]

大阪地方裁判所第21民事部(谷 有垣 裁判長)

令和2年3月19日判決言渡 同日原本受領

平成31年(ワ)第1580号 損害賠償等請求事件

口頭弁論終結日 令和2年1月16日判決文 より

※引用文中の「,」は、閲覧時の便宜のため「、」に変換している

※引用文中の「●(省略)」は判決文ママであり、「筆者により省略」と記した箇所は本稿とは無関係と判断した筆者によるものである

楽太郎

Posted by 楽太郎