「窮すれば通ず」を証明したメーカーと…

1960年(昭和35年)当時、中京・近畿圏と関東圏を中心に全国に100社以上あったとされるパチンコメーカーの内60社は日本遊技機工業協同組合の設立に合意し、1963年(昭和38年)には現在の日工組すなわち日本遊技機工業組合へと組織改編した。

この理由や経緯について、私が所属しているような小規模法人は業界団体とも大手メーカーとも何のコネクションも持たないため本来であれば全く知り得るところではないが、幸いにして自社は日工組とほぼ同等の歴史があり、既に鬼籍に入った創業者を長く支え続けた元幹部社員から若手時代にあれこれと昔話として聞かされたのが今の発信活動でも活きており小ネタ程度ではあるが書けることがあるのは有難いことである。

連発式の解禁、チューリップ機の普及、電動役物・デジパチ時代の開幕といった遊技機の歴史上道標となるような出来事があった頃の様子として、当時の言葉を思い出して列挙してみる。

「貸玉料金は2円の時代が長かった」

「1960年代に入り島組みが近代化されて、現在のような島内に人が居ない循環式の構造を備えた遊技機と島設備が普及して行ったことによる省力化や、高度経済成長期の到来による金銭感覚の変化がぱちんこ業界にも押し寄せた」

「東京だと連発式解禁から何年かしてテング・手弾きの台から電動ハンドル台へと一気に変わっていって、それが75年くらいのことだったんじゃないか。ここまではギリギリ昔ながらのパチンコ台の顔をしていたが、80年代になるともうデジパチ時代に突入して一気に様変わりする。売上の水準も上がってパチンコ屋は大きな日銭が入る商売だという意識が世の中的にも高まったのはこの頃じゃないか」

「そういう訳で1980年前後に創業した法人や新規開店した店舗は多いと思う。パチンコ屋は儲かると踏んで、ボウリングブーム後のレジャー業種もこっちに鞍替えするなどした。屋号になんとか産業とか商会とか元々不動産屋など別業種っぽいのが見受けられるのもそのせい。なんとか観光というのも結構あるが、あれはその当時”レジャー”に当て嵌まる適当な言葉がなかったから取り敢えず観光にしておいた、という理由だと思う。エンタテインメント、アミューズメントじゃあまりにもハイカラ過ぎるし当時はそういう社名にしようという頭すらない」

「デジパチ時代よりも前はまだメーカーは弱く、今のように力関係でホールより勝っていたようなところはなかった」

ざっとこのようなものであるが、冒頭で述べたメーカー団体の設立には60年代当時におけるホールとの力関係が関係しており、つまりメーカー側にとって団体として交渉しなければ対峙できないような面倒な存在が全国津々浦々で展開するホールだった、ということになるだろうか。

実際、私から見て”昔の世代の業界人”特にホール関係者は、様々な場面で相当に無茶なことを考えたり口にしたり相手に対して要求する向きがあり、その特徴を一言で表せば、取り締まり行政と組合組織に対してファイティングポーズを取りたがる。

またメーカーに対しても、こっちは客だぞ、という風な意識が非常に強く、これは事実その通りでもあるが例えば時間帯不問で営業マンを呼びつけたり何かにつけて無償で対処させたがったり或いは営業補償を要求したり、自社のようなちっぽけな法人でさえもそのような旧時代の名残が対メーカーの社内風土として存在したため、私のような1970年代生まれと1940~50年生まれの先輩世代の社員とでは明確なジェネレーションギャップが感じられる場面が多く社内での立ち回りに難儀したのが思い出される。

勿論、全員がそうだという訳では無いが、二言目には「連中(警察庁、メーカー、業界団体など)が言う事に法的根拠はあるのか」「訴えたら勝てる」「組合なんか、いつでも辞めてやる」などと口にする者が多く、例えば何かを申し合わせたり、契約・誓約書面を作成したり、トラブル発生時に仲介しなければならないような場面に出くわすと毎度妥当な落としどころを模索するのが大変だった。

メーカーはそういうクセ者揃いのホールを相手にするためにかつて一致団結して組合を組織し、今ではその力関係は完全に逆転してしまった。全国のホール軒数はここに来て奇しくも今回述べて来た1960~80年当時と同等の水準まで減少して来たが、その組合組織は依然としてまとまりを欠き、業界が置かれている状況と先行きを俯瞰すれば当然守るべき取り決め一つも守れず自らの首を絞め続けている。

60年前に窮して通じたメーカー、いま貧して鈍するホール、これは皮肉であり対照的なことだ。

ホール側の団体には再編の向きもあるが、懐具合の悪さに耐えかねてか大局観の欠如からか或いは旧時代の考え方がいまだに残存しているからか、この期に及んでも日銭を追うことしかできないホールが、組合や業界全体の立場を悪くしているのは残念極まりない。

寄稿者

Posted by 楽太郎