パチンコ店を厄介者扱いするのではなく、地域経済に組み込んだとしたら

構造改革特区制度について

構造改革特区制度は2002年(平成14年)に創設された制度であり、その目的や概要は、国による諸規制が経年などの理由によって世の中の実情に合わなくなり民間企業の経済活動や地方公共団体の事業等を妨げていることがあった場合に、地域を限定して改革することによって構造改革を進め地域を活性化させる、というものである。

内閣府による募集に応じて出された提案は関係府省庁によって是非判断や検討がなされ、どのような回答になったかも公表され回次ごとに記録されており、その中にはぱちんこ業界に関わる提案と回答も見受けられる。

業界特にホール営業に関するものであるから当然、提案に係る法令は風適法であり関係府省庁は警察庁という事になる。

この時点で、どのような提案であってもそう易々と風適法の現行措置や解釈が改められる可能性はまずないだろうとみる読者が多いだろうが、実際にどのような提案がなされ、それに対しての回答がどのようなものであったかについて、参考として2014年(平成26年)の募集時に愛知県名古屋市に本社を構え8店舗を展開している株式会社玉越による提案と、それに対する警察庁の回答を紹介したい。

警察庁(構造特区第25次 再々検討要請回答)

①提案事項管理番号:1028010

<求める措置の具体的内容>

遊技客の希望により、ぱちんこ営業店内に於いて持玉を直接交換(換金)できるシステムを導入する。

<具体的事業の実施内容・提案理由>

ぱちんこ産業をカラオケ、漫画、ゲーム、アニメ等のように世界に通用する産業にする為に、ぱちんこフアン以外には解りづらい現行の換金システムを是正し、外国人(外国人観光客)やパチンコを知らない国民にも解りやすい、時代に適した換金方法を取り入れることをご提案致します。具体的にはセキュリティがしっかりした設備のあるぱちんこ営業店内で「貸玉・貸メダル」の買戻しを行い、遊技の結果に応じて換金を希望するお客様に対し、ぱちんこ営業店内で「貸玉・貸メダル」と同等金額で直接交換(換金)できるシステムです。このシステムの採用により、警察庁が認めている現行の換金システム(三店方式と呼ばれる賞品交換システム)による不必要な経費や弊害を無くすことにより、社会貢献を目的としたぱちんこ産業の地元への直接納税(地域福祉目的税の新設、売上の1%)を行うことが出来ます。つまりぱちんこを今以上にシンプルで明るく健全で社会貢献出来る娯楽産業にする事が可能になります。その結果世界中の人々に「健全なぱちんこ産業」として、ぱちんこの楽しさ素晴らしさを認めて頂く機会が増えることになり、新たなビジネスモデルとしてのぱちんこレジャーが初めて世界中に輸出できる体制となります

<警察庁からの検討要請に対する回答>

ぱちんこ営業所内において遊技客の玉又はメダルが現金で買い戻されることは、ぱちんこ営業に関して現金が賞品として提供されること等と同一視でき、当該営業について著しく客の射幸心をそそるおそれが生じるととに、当該営業が賭博罪に当たる行為を行っているとの評価を受ける可能性があることから、認められない。



②提案事項管理番号:1028020

<求める措置の具体的内容>

「貸玉・貸メダル」の最高限度額を変更する。現在は風適法に定められている貸玉、玉一個につき4円、貸メダル、メダル一枚につき20 円を超えないこととなっている「貸玉・貸メダル」金額を、それぞれ、玉一個につき 5円(現行の25%UP)、メダル一枚につき25円(現行の25%UP)を超えないことに改定する。

<具体的事業の実施内容・提案理由>

現在の社会情勢を鑑み、再度ご提案させて頂きます。ぱちんこの貸玉金額は昭和53年(1978年)に「玉1個につき3円から、玉1個につき4円を超えないことに改定されてから実に36年以上も見直しがなされておらず、ぱちんこフアンからは、貸玉金額の上限の改定を望む声があがっております。そもそもぱちんこ営業は、ぱちんこの発射速度が1分間に100発以内にすることを定めているなど、法律により担保された遊技機により営業を行っており、18歳未満の者を客として立入ることを禁止している等、適度な射幸性を保った最大の大衆娯楽産業であります。地域により、遊技客が望んでいるより幅広い「貸玉・貸メダル料金」から、貸玉にあっては玉1個につき5円、貸メダルにあってはメダル1枚につき25円を超えない金額の範囲内より、お客様の選択により遊技を行うことが、時代に適した遊技方法であるため、再度提案をさせて頂きます。今回のご提案は、成熟社会である現在にあっては個々の責任と意志を尊重し、たとえ貸玉金額の上限を改定したところで遊技機にはなんら影響はなく、ただちに当局が考える著しく射幸心をそそるおそれが生じる営業とは必ずしも判断されることは全くないと考えられるからであります。例えば昭和20年10月に最初の宝くじが発売(1等賞金が10万円)されたものが、平成25年には前後賞あわせて7億円の宝くじの発売に至りました。またBIG(サッカーくじ)に至っては最高当せん金額が10億円であることからも、国民の大衆娯楽であるパチンコだけが過剰な規制を受けているといわざるを得ないのであります。

<警察庁からの検討要請に対する回答>

ぱちんこ営業に係る遊技料金の引上げについては、当該営業について著しく射幸心をそそるおそれが生じることから、認められない。



③提案事項管理番号:1028030

<求める措置の具体的内容>

ぱちんこ営業店が、遊技の結果に応じて賞品として提供できる賞品の価格の最高限度に関する基準を3万円を超えないこととする。

<具体的事業の実施内容・提案理由>

現在ぱちんこ営業店では、賞品として多種多様な品揃えを行い遊技客に提供しているところではありますが、現在の賞品の最高限度額は、平成2年にそれまでの最高限度額3千円から1万円まで引き上げられた後、20年以上が経過しており、今日に至るまでその妥当性の検証がなされておらず、最近の健康ブームや消費者の高級志向により、現行の1万円を超えない等価の物品では必ずしも遊技客に満足のいく賞品を提供しているとは言い難く、上限を3万円に引上げることにより、貯玉・再プレー制度の活用と相まって今よりも一層多品種で高額な賞品を提供することが出来ます。また今回の提案は現在の社会情勢を鑑み、例えその物品の上限を3万円に上げたとしてもお客様の遊技にはなんら影響はなく、著しく射幸心を煽っていることにはならないと考えられるのであります。例えば、1万円の賞品を3個獲得する場合と、1個3万円の賞品を獲得する場合、共に賞品獲得金額は3万円であるが、現在の成熟した社会にあっては、3万円分の賞品を獲得する手段が、1万円の賞品3個と3万円の賞品1個の獲得方法のどちらかであったとしても、(例えば3万円の賞品1個を遊技客が獲得した場合)それだけでは著しく射幸心をそそられるとは決して言えないのであります。風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律により、保通協で検定審査し遊技機メーカーに許可を与えた遊技機の設置を行っているぱちんこ営業店は、適度な射幸性を保った健全な娯楽産業なのであり、例え賞品最高限度額を現在の1万円から3万円に引上げたとしても、「著しく射幸性をそそる行為」には何ら抵触することは無いと思われます。

<警察庁からの検討要請に対する回答>

ぱちんこ営業に係る賞品の最高限度額の引上げについては、当該営業について著しく客の射幸心をそそるおそれが生じるとともに、当該営業が賭博罪に当たる行為を行っているとの評価を受ける可能性があることから、認められない。



④提案事項管理番号:1028040

<求める措置の具体的内容>

ぱちんこ営業店は地元のぱちんこフアンによって支えられており、地元商店街を応援する為にも地域を限定した商工会及びそれに準ずる団体が発行する地域振興券を賞品として提供することを可能にする。

<具体的事業の実施内容・提案理由>

80年以上の歴史と大衆娯楽レジャーである、ぱちんこ産業が日本(地域社会)の経済回復に貢献する。全国各地の地域商店街では、大型店(スーパー)の進出、消費ニーズの多様化、後継者難などに加え地域間競争が激化する等、商業環境が悪化する一方の為に、その経営がますます厳しくなってきています。これら低迷する商店街の活性化対策の一つとして、改めて地域振興券の持つ個人の消費意欲を喚起する即効性が期待されています。ぱちんこ営業店がある地域にとって経済発展の中核をなすような地域通貨もしくは地域振興券を賞品として提供することにより、地域経済の発展に大いに貢献できると考えられるのであります。

<警察庁からの検討要請に対する回答>

ぱちんこ営業に係る商品として、有価証券に該当する商品券の提供を可能とすることについては、当該営業について著しく客の射幸心をそそるおそれが生じるとともに、当該営業が賭博罪に当たる行為を行っているとの評価を受ける可能性があることから、認められない。



⑤提案事項管理番号:1028050

<求める措置の具体的内容>

ぱちんこ営業店が遊技の結果に応じて、宝くじを賞品として提供することが出来る。

<具体的事業の実施内容・提案理由>

日本で生まれ大衆娯楽に発展したぱちんこは、戦後より実に大勢のフアンの支持を得て現在に至っています。「ぱちんこ営業店」が賞品に宝くじを提供することにより、遊技客に夢を与え、また宝くじを仕入れることにより、当せん金付証票法上の宝くじ収益金増加が見込まれ、その収益金が公共事業等に使われることにより社会貢献を行う娯楽産業に発展する事が可能になります。

<警察庁からの検討要請に対する回答>

ぱちんこ営業に係る商品として、有価証券に該当する宝くじの提供を可能とすることについては、当該営業について著しく客の射幸心をそそるおそれが生じるとともに、当該営業が賭博罪に当たる行為を行っているとの評価を受ける可能性があることから、認められない。



⑤提案事項管理番号:1028060

<求める措置の具体的内容>

ぱちんこ営業店が許可されている、貯玉・再プレーシステムカードを活用することにより、遊技客がぱちんこ営業店外のコンビニエンスストアに於いて、貯玉カードを活用して自由に賞品(生活必需品)と24時間交換出来る。

<具体的事業の実施内容・提案理由>

現在、日本全国のコンビニエンスストアは約50,000店あり、そのうち実際に店頭に並んでいる商品は1店舗当り、約2500品目から3000品目といわれています。ぱちんこ営業店は遊技の結果に応じて賞品の提供を行う営業ではあるものの、限られた営業スペースでは、どうしてもお客様に遊んで頂く遊技台が主役であり、その為に賞品を置くスペースや多数の賞品を陳列することがなかなか難しいことや、また、ぱちんこ営業店は予め営業時間が決められている等から遊技客の多様な生活環境や生活リズムに適応する賞品の提供が行われているとは言い難く、それらを改善するためにも、予めぱちんこ営業店と提携を行ったコンビニエンスストア内であれば、ぱちんこ営業店の貯玉システムを活用することにより、遊技客の獲得した貯玉数に応じた賞品を自由に交換できるものとします。そもそもコンビニストアは24時間営業を行っており、好きな時間にゆっくりと生活必需品等が選べる等、まさに大衆娯楽に適した賞品交換方法になる為、今回のご提案をさせて頂きます。

<警察庁からの検討要請に対する回答>

ぱちんこ営業に係る貯玉カードを活用してぱちんこ屋の外に所在するコンビニエンスストアにおいて賞品(生活必需品)と交換することを可能とすれば、ぱちんこ営業の営業行為の一部が、許可に係る営業所の外で行われることとなり、善良の風俗や清浄な風俗環境を害するおそれがあることから、認められない。

「if」の話

前段で紹介した提案と回答について細部に亘り見て行くことはしないが、概して論旨自体は特に無理はない妥当な提案であるような印象を受ける。

しかし、やはり風適法の壁は高く堅固であり、「著しく射幸心をそそるおそれ」のないように営業すべしという法意を持ち出されてはあまりにも分が悪いというのが率直なところである。

また、これは2014年の遣り取りであることから、その後進捗したIR関連の事情によりパチンコスロットもこれに含まれる「ギャンブル等への依存問題ならびにその対策」を考えた際にどうなのか、という新たな判断基準も更に加わることから、一見すると世の実情に適し国の税収への貢献や地域経済の振興にもなり妥当にも思えるような提案であっても、その実現に向けて前向きに検討される可能性はより一層低くなったと言えるだろう。

いつまで旧来的な法意や価値判断を酌まなければならないのか、ということについては、これはしかしホール営業にとっては、そうであるからこそ得られているメリットが極大であるからして、これ以上は突っ込んだ話はしにくい。

そのメリットとはなにか。警察庁としては、いわゆる三店方式が法令上許容し得るかたちで運営される限りにおいては、遊技客の自由な経済活動としての私有財産の売却を妨げる事が出来ないという立場を維持し続けていることである。

民業においてこの実質的な換金がただちに違法とはならないとされているのは風適法に定める4号営業たるパチンコ店だけであり、戦後の取り締まりを主眼とした風営法から連なる、この言わば”巨大なレガシー”を今でも享受できているだけで充分ではないか、という考え方も成り立つからである。

しかし、その一方で、もしも今回紹介した株式会社玉越による諸提案の内いくつかが実現していれば、特にコロナ禍の地方自治体・地域経済レベルでは税収にしても直接消費においても「パチンコ店が地域の役に立った」という場面がより多く見られたのではなかろうか、とも思うのである。

例えば、地域のホールから得られ直接的に地方自治体の財源となる税収等で休業補償をより手厚いものに出来たかも知れないし、飲食店や小売店での消費回復の一助になったかも知れない。

本稿はあくまでも「if」の話であり、これによって風適法を改正すべし、或いはぱちんこ業法制定を急ぐべしなどといった論調には持って行かないが、私が所属しているホール法人本社や管理店舗の界隈で一度降りたシャッターがもう二度と上がる気配がない店舗や、地域で繁盛店・老舗と目されていた店舗が悲惨な集客状況になっているなどといった具合いに敢えて言えば壊滅した繁華街・商店街を見るにつけ、地元客のおかげで営業できている私の管理店舗も、もっと地域のお役に立てることがあるのではないかと色々と思いを巡らせた次第である。

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【参照】

・首相官邸HP『01 警察庁(構造特区第25次 再々検討要請回答)』

楽太郎

Posted by 楽太郎