対ユーザーの取り組みを諦めない

企業経営・店舗運営の場において「実績が低下した際に、外的要因、特に不可抗力と見なされる事象をどの程度考慮するか」というのは常に話題に上がる事である。

どのような商品・サービスを提供するかにもよるが現実問題として、数十年に一度レベルの自然災害や今般のような世界規模での疫病の蔓延などに際して、多くの業種では大体において営業実績を落とす。

これは世の中の商品やサービスの多くが現物としての価値を重要視されていたり、それが流通したり提供される場面において対人を念頭に置いている限り容易には解決し得ない事と言える。

ぱちんこ業界においてもそれは同様であり、1990年代初頭にかけて人気を博した現金機や権利物などの多くが釘曲げにより高射幸性仕様に性能改変され90年代後半にかけて社会的不適合機として撤去の憂き目に遭い、気付けば全国のホールに設置されているパチンコ機の多くは画一的なデジタル抽選機ばかりとなり、これをもって業としての衰退と見なす業界人は多かったと言える。

その後は、2006年後半から世に出始めた確率1/390前後且つ継続率80%程度の型式の総称としての旧MAXタイプ機や4号機が完全撤去されて以降数年を掛けて払出性能を回復させた指示機能を有するスロット機が席巻する時代となり、警察庁はその射幸性の高さやヘビーユーザー化による依存問題を危惧し結果的には検定機と異なる状態で販売された可能性のある遊技機や高射幸性スロット機として2016年以降段階的に撤去が進み、またしても業界はメーカー側としてもホール営業の観点でも産業として斜陽にある事を強く意識するようになった。

長年にわたり放縦な釘調整と派手な広告宣伝という両翼で他の多くの産業よりも高所を飛んでいたぱちんこ業界は、射幸性の抑制と依存問題対策という警察庁の二刀流により飛翔するための力を失ったのである。

そこに来て、まずは手軽により多くの大当たりを体感してもらおうという観点からのアプローチとしてパチンコ入門者或いは消費金額がネックになり遊技から遠ざかってしまっているユーザー向けのタイプ機として「ちょいパチ」のプロジェクトが動き出し、次いでCR天下一閃の登場により約20年振りに注目を集める事になったのが「役物抽選機」であった。

メーカー有志は、玉の動きを目で追うという”パチンコ本来の楽しみ”でユーザーに訴求する事、投資金額や大当たり1セットでの出玉および消化時間・リターン期待値等が事前に目安として読め短時間でも楽しめるタイプ機を供給する事を旗印として「ハヤブサプロジェクト」を立ち上げ、業界にはアナログ的な魅力をユーザー側に対して再度提供して行こうという雰囲気が醸成された。

しかし、実際にはちょいパチの設置比率はその後4年間にわたり4円コーナーの1%前後で推移し肝心の稼動も低貸しパチンコの22,000個水準を大きく下回る17,000個水準に甘んじ、役物抽選機の方も懐具合が悪化しているホール側がまともな運用レベルを維持できない事もあってか夜時間帯の会社員稼動くらいしか得られなかったりという具合いに、より多くの大当たりや玉の動きを体感してもらう事でパチンコという遊技に面白味を見出してもらうという本来の狙いからは遠ざかってしまっている。

しかし、スマホアプリやオンラインでの遊技サービスが普及する流れにあって前述したような施策も含めて敢えてホールに足を運んで貰う事による遊技体験を価値付けしたり、昨今急速に存在感を増している有名経営者・店長・役職者やアイドルスタッフなどが表に出る事により従来謎に包まれていたホール営業はそれに携わる者たちの顔や人となりが窺える場へと変わりこれをもってEC化した社会の中で独特な場であろうとする取り組みが展開されているのもまた事実である。

このような動きは、およそ射幸性のみを武器としシャッターを開けて自動ドアの電源を入れさえすれば勝手にユーザーが集い今とはかけ離れた水準の営業数字を残せていた当時では見ることが出来なかった景色と言える。

コロナ禍によるホール営業に対する休業要請の解除以降、遊技から2~3ヵ月離れた事で遊技意欲が減退したというユーザーの声も各所で見聞きされる一方で、わざわざ街へと出て何かと面倒臭い事も沢山あるパチンコスロット店に敢えて入店して一時の娯楽に興じる、という事の面白味を再確認しているユーザーも多く居るだろうと考えられる。

つまり、ホール営業の現場ではパチンコスロットの魅力をユーザー側に訴求するにあたり、バーチャルではなく体感で、デジタルだけでなくアナログも、疎から密へ、クローズドからオープンへ、などという潮流があった訳であるが、それは時に不幸にも感染拡大防止のための対策とは真逆の取り組みになってしまうのが悔やまれた。

私は営業部署の管理やスタッフ指導において「”仕方ない”、”仕方なかった”というのは周囲の人が言ってくれるものであり、自ら発する言葉ではない」と常々言い聞かせており私自身もそれを留意しながら業務にあたっている。

地域ユーザーに日頃から通ってもらえるような機種運用を心掛けて来たり、前述したような取り組みも含めて勝ち負け以外の価値も提供しながらユーザーと接して来たホール関係者も沢山居ることと思う。

夏場の4連休ではあるものの多くのホールにとって目下の来客数は決して望ましいようなものではないかも知れないが、それはコロナ禍の第二波と呼べる状況におけるユーザー側の懐具合や警戒心も影響しているのだから「仕方がない」ことと言える。

この様な状況下で、ユーザーをただ単に全体として捉えるのではなく顔の見える存在として意識して個々に対人接客に臨むホールスタッフやそれを監督指導する役職者の努力が、より早期に報われる事を願って止まないと述べて本稿を締めさせて頂く。

楽太郎

Posted by 楽太郎