存在や価値が認められ許容されれば残る。パチンコスロットはどうか?

『バンクシー展 天才か反逆者か』に興味がある。

主にストリートをキャンバスとして活動しているイギリス人グラフィティ・アーティストのバンクシーは、普段は絵画芸術に一切興味がない人であっても「一晩で大都市の路上にアート作品が出現!?」等と報道されて灰色のビル壁などにごく簡素な色合いで表現されたスプレーによる作品を見ると、その社会風刺が効いた題材であったり純粋に小洒落たデザインに魅了されて自宅にでも飾りたいという衝動に駆られる方も多いように思う。

バンクシーの社会風刺は、単にそのデザインに何らかのメッセージが込められているというだけではなく、正式に発表されたり路上などで「見付かる」時期が絶妙だという点において、作品と社会情勢が噛み合って完成する動的なものであると私は解釈している。

彼、またその作品が日本において一気に知名度を得たのは、おそらくは2018年10月5日にロンドンで開催された競売大手サザビーズによるオークションでのシュレッダー事件であろう。

『Girl with Balloon』と呼ばれる作品が104万2千£(当時レートで1億5千万円)で落札された直後に、仕込み裁断機がリモートで作動して半分の位置まで裁断されてしまったあの事件である。

自分は、このような格式ばった場所に参加している一握りの連中から仰々しく取り引きされるような事を想定して活動している訳では無い、という主張が悪戯のようなかたちで行われたように見え、なかなか面白い事をするものだと感心した者も居るのではないか。

実際には作品の全部が裁断されてしまう予定だったようだが、不具合により半分の位置で停止してしまったのは御愛嬌であり、この「演出」によって作品としての価値が更に上がったのではないかという見解も巻き起こり、私自身動画を視聴した際に思わず顔がほころんでしまった。

直近ではアメリカにおける人種間の衝突を描いた作品があり、これは6月6日に本人のインスタグラムで公開され日本でも翌日には多くの報道機関が報じて即時話題になった。

【参考】『バンクシー、黒人差別を批判 新作は「燃える星条旗」』時事.com

また、コロナ禍に際しての作品としては、5月6日よりイギリスのサウサンプトン総合病院にて展示されている『Game Changer』というものが知られている。

タイトルの意味をスポーツや経済分析の場面等で総合的に解釈すると、状況や趨勢を一変させる働きをする個人・企業・製品・アイディアといったところだろうか。

同作品におけるそれは男児が高く掲げているマントを羽織った看護師であり、普段はお気に入りのオモチャであるバットマン・スパイダーマンをゴミ箱に追い遣り、目下まさにヒーローとしての扱いを受けている事が想起される。

この作品を、どのように解釈するか?

それは、見る者によってかなり見解が分かれる事と思う。

なぜか、それは、前述した通りストレートなメッセージとして受け取るのか、それとも「子供(=世の人々)は飽きっぽく不義理だ。次のヒーローが現れれば用済みであり、たとえどんなに活躍したり命を救ってくれても、すぐに忘れ去られるだろう」という社会への嫌味が暗示的に含まれているものとして見るのか、という違いである。

私は西欧圏の事情には疎いので言及すら出来ないが、こと日本においては後者のような解釈の方がマッチするように思う。

【参考】『バンクシー、医療従事者たたえる新作発表 英病院に展示』 AFP通信

5月27日に閣議決定された「2020年度厚生労働省第2次補正予算案」を参照すると、「新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金」の規模は1次補正予算の15倍にまで拡充され、概して言えば医療機関や介護施設などの従業者で今回の新型コロナ患者や入所者等に診察などで直接的に接した者に対して20万円、その他の者には5万円を慰労金として支給する等と言った具合いに、命を張る業務への対価を上乗せする措置を取った。

この金額の多寡やケアの十分・不十分という事については個々人によって意見が異なるだろうからここでは割愛するが、翌々日にあたる5月29日に展示飛行を実施した5機のブルーインパルスが都心の青空に描いたスモークの軌跡は医療従事者への感謝と敬意を表すものであり報道機関も大きく取り上げ、また感染拡大第1波のピークアウト時期とも重なったため多くの者にとってある種の安堵感と共に印象深いイベントになった事と思う。

本稿執筆中の6月下旬であれば、まだ第2波への懸念が残っているため前述したような物事や心情は人々の記憶にしっかりと残っているがしかし、あらゆる業種における休業要請が解除され営業が再開し、生活の有様が元通りに、或いは新しい生活様式といわれるものが始まり、コロナ禍のヒーローやヒロイン達の覚悟や活躍は早晩すっかりと忘れ去られる可能性が高いとみる。

さて、このブログはパチンコ店長のブログである。

話をぱちんこ業界の事に転じて締めたいと思う。

コロナ禍の第1波を3月末から5月末と定義すると、ぱちんこ業界特に接客最前線の現場であるホールは概ね4月初旬から5月末まで程度の差や地方自治体或いは店舗ごとの事情の違いはあれ各種自粛や休業に応じ、また「世間」からの非情な攻撃に晒された。

これはとてもインパクトがある出来事であったが、今のままでは、おそらくはこの強烈な記憶すらも業界内では忘れ去られる事と思う。

既に多くのホールでは取材・来店系のイベントが復活し、いつも通りの姿を取り戻す流れで、過度のバッシングへの反動として起こった業界への同情論も程なくして忘れ去られるだろう。

業界に携わる者のより多くが今回の出来事をしっかりと記憶・記録しようと努めたり、業務に反映させ従来のやり方との「違い」を生み出そうと試みたり、営業手法、新機種の開発・販売・購入・売却の仕方、こういった諸々の事を再考する機会になるかも知れないと期待もしたが、私の今の考えでは少なくともホール営業に関しては「元通り」になるものと推察し、それはすなわちファンの離脱の流れが止まらない事を意味している。

単純にイベント営業だけ見ても、情報を得ている一握りの者だけが楽しめる閉鎖的な場になりがちであり、幅広い年齢や属性の遊技客をカバー出来るような営業手法とは言えない。

主に型紙を用いたスプレー画というかたちで大衆が往来する路上で披露されるバンクシーのアート作品は、金持ちでも中流でも貧乏でも何ならホームレスでも鑑賞する事が可能で、価値が見い出されれば時に盗まれ時に行政の保護を受け時にオークションにも掛けられる。

その逆で、価値が見出されなければ落書きによって毀損されたり上塗りで修復されたり行政側から清掃・除去されて姿を消す。

そういった意味で、世の人々の判断と反応に身を委ねており、社会の中で認められたり許容されたりしないと存続する事が出来ない。

今後、パチンコスロットはしっかりとしたかたちで残り得るか?

また、どのようにして残すか?

バンクシーのような世界的に有名なアーティストの作品を引き合いに出してパチンコスロットのような”俗物”を語るなというお叱りも受けそうであるが、私は物事を考える際の切っ掛けなど何でも良いと思っており、またごく私的なブログという場でもあるのでご容赦を願いつつ本稿を締めさせて頂く事にする。

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注:TOPページの見出し画像はフリー素材サイト「photo AC」のものを使用しており、記事で話題にしたバンクシー氏の作品ではありません。

楽太郎

Posted by 楽太郎