「行政講話」を読み解く事で、ぱちんこ業界の未来を窺う

2020年6月25日

はじめに

6月18日に開催された日遊協の通常総会において、警察庁生活安全局保安課長 小堀氏の行政講話が書面配布というかたちで行われた。

その内容は、直近のコロナ禍に際してぱちんこ業界が置かれた状況等を客観・主観織り交ぜつつ多方面から評価すると共に感染拡大防止のための対策継続を改めて要請するものになっており、全体の構成がここ数年来パターン化された従来的な章立てや内容では無かった事もあって、多くの業界人の目には新鮮なものとして映った事と思われる。

【参考】遊技通信web 6月19日up

『日遊協令和2年度総会における警察庁保安課長講話』

ここでまずは、「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律」の制定に向けたIR関連の動きが表面化する事で今後国会の場でも世論としても当然の流れとして巻き起こって来るぱちんことカジノの住み分けについて、また「射幸性の抑制」と「依存問題対策」への取り組みについて警察庁が本腰を上げる事で私見では2015年前後からパターン化されて来ていた「行政講話の章立てと内容」について、ごく簡単にではあるが見て行く事にしたい。

そうする事で、今回の講話が何故業界人にとって真新しい内容として、或いはお役所言葉ではないものとして好意的に受け止められたのか、理解が深まる事と思う。

その後段では、3つの章を充てて、今回の講話において全容については触れないまでも私としては特に重要だと感じた3つの箇所をピックアップしてそれぞれ個別に見て行こうかと思う。

近年のパターン化された行政講話

行政講話とは

まず、そもそも「行政講話」とは何なのかについてであるが、ぱちんこ業界においては、各業界団体の会合の場等に警察行政の担当官を招致して行われる講話の総称として用いられる言葉である。

これはホール団体、メーカー団体、その他流通に携わる団体の理事会等の多岐にわたるが、業界内で取り分け注目度が高く警察行政の上位担当官が原則として必ず臨席して行われる規模が大きい会合における行政講話は、下記の3つの場においてなされる。

①全日遊連 全国理事会(慣例上、1月に開催)

②日遊協 通常総会(慣例上、6月に開催 ※総会後の祝賀会にて)

③余暇進 秋季セミナー(慣例上、11月に開催)

これらを主軸として、それ以外の21世紀会、日工組、日電協、全商協、回胴遊商その他団体の年1回開催扱いの会合における講話も併せて見る事で、警察行政のぱちんこ業界所管および取り締まりスタンスが見えて来るのだと言える。

警察の組織形態とは

次に、前述した主要な会合において講話を行う行政担当官についてであるが、まずは組織形態から見て行くと警察庁には1官房・5局が置かれており、改正警察法(2019年4月)第22条に定める4項である「犯罪・事故その他の事案に係る市民生活の安全と平穏に関すること」「地域警察その他の警らに関すること」「犯罪予防に関すること」「保安警察に関すること」に規定されている役割を担うのが生活安全局である。

この生活安全局には生活安全企画課、少年課、保安課、情報技術犯罪対策課、生活経済対策管理課の5つが設置されており(「地域課」は2019年改正警察法により生活安全企画課に統合された)、ぱちんこもこれに含まれる風俗営業の許可および取り締まりを所管するのは保安課であるため、そのトップである保安課長或いは課長補佐が業界団体の重要な会合において講話を行っている、という訳である。

近年の講話の内容構成について

次に、前述したような会合の場における「よくあるパターン」の行政講話の章立てについて見て行きたい。

前段で述べた通り、IR関連の動きが表面化して以降の、特に全日遊連全国理事会や各方面遊協における講話の章立ては、

①ぱちんこ業界における依存問題対策について

②射幸性の抑制に向けた警察行政の指導ならびに業界側の自主的な取り組みについて

③遊技機性能等に関する目下の事情について

④遊技機の不正改造の絶無について

⑤遊技機の流通における業務の健全化について

⑥ホールにおける賞品の適正な取り扱いについて

⑦広告宣伝規制および業界側が策定したガイドラインに則ったホール営業について

⑧その他

ざっと、このような項目について言及するような構成になる場合が多い。

それぞれの項目の内容を具体的にみると、①に関しては業界が持つ負の側面としての依存問題およびその対策について語られ、近年ではギャンブル等依存症対策推進関係者会議で業界に対して指摘された内容も織り込みつつ自己・家族申告プログラムの実施やホール内ATMの撤去、リカバリーサポート・ネットワークの活動支援等、広く国民に理解されるような実効性がある取り組みを要請される場合が多い。

②と③については、ぱちんこ営業が射幸心をそそるおそれのある営業である限り必ず言及される事であり、近年の話題の中心はやはり規則改正であり、法令に則った旧規則機の撤去と、業界側の申し合わせ事項としての高射幸性スロット機の段階的な撤去について語られる場合が多い。

④と⑤に関しては、いわゆる「裏モノ」が横行した4号機時代よりはボリュームが少なくなっているが、釘曲げによる検定型式の改変や基板開封によるプログラム改変事犯等を事例として注意喚起される場合が多く、警察庁がメーカー団体に働きかける事で制定された製造業者遊技機流通健全化要綱により2016年(平成28年)4月以降に販売された型式の遊技機については部品交換の際に変更承認申請に係る保証書を担保するものとして遊技機の性能が検定機と同一かどうか点検確認を実施するようになり、また主に旧MAX機がその対象となった「不正」遊技機の撤去問題以降の流れで制度化された「くぎ確認シート」の運用について、厳しい文言で確実な履行が求められる。

⑥については、賞品買取事犯(いわゆる「自家買い」)について、賞品の取り揃えの充実について、等価交換・一物一価の順守による適正な賞品提供の徹底の3点について主に語られ、2015年4月に風適法に関する処分基準モデルの一部が改正され現金等提供禁止違反及び賞品買取禁止違反についての量定基準が見直され「営業停止」の基準期間が3ヵ月相当に引き上げられた事と、直近に違反事案があれば必ず例として挙げ非常に厳しい文言で改めて注意喚起される場合が多い。これは、ぱちんこ営業と賭博との線引きとして最も重要な事だからである。また賞品の取り揃え義務の履行については、いわゆる特殊賞品に交換需要が偏らないようにするために、十数年前までは貯玉管理システムの導入とも関連付けてその重要性や有効性が語られる事が多かった。

⑦については、いわゆる広告宣伝規制と総付景品規制が通知されて以降はかなりのボリュームで言及され、特定日・機種・コーナーを殊更に取り上げてのイベント営業を問題視するのは勿論、それが近年では依存問題対策の観点からも確実に順守されるべきであると指摘される場合が多い。

最後に⑧については、警察庁が特に憂慮している直近の事犯や世情について付言される場合が多く、例えば最近では置き引きの多発とその対策の必要性についてであったり、特に夏季においては駐車場における車内放置の防止について、暴力団再関与防止の必要性やいわゆる「闇スロ」に撤去遊技機が流出しないような適正排出の必要性、社会貢献活動としての寄付寄贈等の取り組みへの評価、18歳未満の者の営業所への立ち入らせが無いように、遊技人口減の状況とヘビーユーザー化との関係性について、といった多種多様な事柄について言及される。



以上、近年において「よくあるパターン」の行政講話の章立ておよびその内容について簡単に見て来た。

通例としてはホール営業に関する細かい物言いがなされる全日遊連の理事会のものは上記のほとんどの項目について言及され、メーカー団体(日工組、日電協)や販社団体(全商協、回胴遊商)の会合における講話では⑤の適正流通や点検確認のボリュームが増す代わりに⑥~⑧が省かれる、といった具合いに講話が行われる会合の場に応じて各項目の内容の増減や言及の度合い等は異なる。

参考として、昨年の日遊協通常総会後の祝賀会における当時の保安課長 山田氏による講話を紹介しておくので、時間に余裕がある方は後ほど今年のものと比較して頂くのも良いかと思う。

【参考】遊技通信web 2019年6月19日up

日遊協通常総会 祝賀会における行政講話

何故パターン化されるのか

今年の1月に保安課長として着任したばかりの小堀氏であるが、十数年前に警察法改正以前の部署である「生活環境課」の課長補佐として業界所管経験があることから、おそらくは各業界団体の会合の場において「自分の言葉で」語ろうと思えばいくらでもそれが出来るものと推察する。

しかし、コロナ禍以前の1月の全日遊連全国理事会における行政講話では、前段で示したようなパターン化された内容で講話を実施している。

何故そうなるのかと言えば、やはりそれは警察庁或いは担当官として従来の警察行政の指導方針や前任者の発言と齟齬が生じないように留意しているからに他ならないだろう。

風適法関連の法令には様々な規則や規制があり、それらについて監督官庁として歴史的な経緯も含めてどのように解釈し運用するのかが業界の今後に大きく影響する訳だが、仮に、人事異動により担当官が変わるたびに解釈や運用の仕方までもが変わってしまうならば業界所管に混乱を来すため、連続性・継続性を持つような有りがちな内容になってしまうのにも理解が出来る。

こうした事を踏まえて、改めて6月18日の日遊協通常総会における講話を見ると、パターン化されたものではなく当面の話題を大幅に盛り込みながら業界の取り組みを評価した上で、何故射幸性を抑制し依存問題対策を講じなければならないのか業界の将来にとっての重要性を親身になって説くような章立ておよび内容になっているため、これを新鮮な気持ちで受け取るだけでなく「感動」すら覚えた業界人も多く居たものと推察する。

風適法の下で発展して行く事は可能か?

それでは次に、今回の小堀氏の講話において私が特に重要だと感じた3つの箇所について順次見て行く事にする。

まず第一に、コロナ禍に際しての業況概観および感染拡大防止への取り組みに関連付けて、小堀氏は「ぱちんこ営業が信用保証協会の保証の対象、政府系金融機関の支援の対象になりました。既に運用も始まり、多くの営業者から申請がなされていると聞いています。これは、業界にとって、長年の願いが成就されたものと認識」していると述べ、なぜこれが認められたのかについて「ぱちんこ営業の射幸性が風営法でしっかりコントロールされていること、とりわけ先般の規則改正により射幸性が抑制されたことが、担当省庁である中小企業庁等から理解が得られたからです。言い換えれば、射幸性を抑えた中で、皆様がこれまで経営努力をし、今後もし続けるであろうことが正当に評価されたもの」としている。

この事に関して私は、これまでの、そして現在も進行中である警察庁による業界の指導方針と業界側の取り組みは真っ当なものである、と言いたかったのだと読み解いた。

規則改正と業界側の自主的な取り組みとしての「射幸性の抑制」や、コロナ禍において社会の一員としてあるべき振る舞いを適正に行うからこそ得られた、そして今後も得られるものがあるのだ、と。

業界の取り組みについて、この「射幸性の抑制」と「依存問題対策」というものは十分・不十分という判定基準が曖昧であり、このような指導方針に従う事の先にどのような未来が待っているのかと不安視され、また業界団体側の方針としてある「風営法のもとで発展していく」という事が本当に可能なのかと疑問を持っている業界関係者も多く居る事と推察する。

これら2つの取り組みにおいては科学的・医学的な観点での調査研究も行われており、今後どんどんその結果がレポートされ議論も深まって行くだろう事が予想されるが、現時点では取り締まり行政側に対して強い説得力を持つような権威がある基準は未だ確立されていない。

しかし、今回の講話で小堀氏は「射幸性の抑制」が警察行政とは別の管理職域である経済産業省の外局である中小企業庁等から客観的に評価された結果として行政保証・支援の対象に該当する事になったと明言する事により、警察側の指導の妥当性を示すと共に業界側に対して風適法の下で発展していく事は可能であり、そうする事で社会のいち産業として真っ当に存立し得ると説いたと言える。

極めて異例な「経過措置」期間の延長

第二に、いわゆる経過措置期間の見直しについて、小堀氏は「今回の改正は、いわば、業界団体による旧規則機撤去の取組に対する信頼をベースに行ったものであります」と述べている。

過去の規則改正に伴う経過措置の際や、いわゆる「社会的不適合機」「みなし機」「検定機と異なる状態で販売された可能性のある遊技機」或いは高射幸性スロット機等の撤去の際にも、似たような言い回しはあった。

法令を厳密に適用し、やろうと思えば猶予なく一斉での撤去を要求する事も可能な場面でも、中小企業を主体として構成されるホール組合の経済的な負担等を考慮して期限を設けた段階的な撤去に留め置くとしたり、メーカー団体も含めた業界側で協議の結果申し合わせた撤去日程に則って、つまり自主的な取り組みとしてそれがなされるように「仕向ける」際に、業界への信頼がベースになっている措置なのだというニュアンスで度々付言されて来た。

例を挙げれば、業界人のみならず特にいわゆる爆裂AT・ストック機ファンのスロットユーザーにとっては非常にインパクトがある出来事であり直近と同様に「射幸性の抑制」を目的として実施された2004年の規則改正に伴う行政講話を見ると、射幸性が比較的低く風適法の解釈に合致すると考え得る一部の「みなし機」の経過措置について、文字面だけみれば期限日ギリギリまでの設置が可能であるが、これは本来、順次新規則機が市場に供給されるに従って入れ替えられるべきであるとしている。

長文になるが、直近の規則改正ならびに今回の経過措置期間の延長に係るホール側の入れ替え方針についても関係する事であるため、以下で当時の2つの講話を紹介し要点を抜粋したい。

[参考]

①2004年(平成16年)2月27日 全日遊連緊急全国理事会

警察庁生活環境課課長補佐 若田英氏による講話(抜粋 ※括弧内は著者補足)

「(一部の旧規則機の継続設置が認められるからといって、新規則機への入れ替えをせずに、比較上射幸性が高い旧規則機をより多く留め置く事について)基本的には営業者の自由なんですが、業界の要望に基づく措置の使い方としてはこれは正しくないと思います」

「私がここで、正直に申し上げて怖いことが2点ございまして、1点目は、こう言っているにもかかわらず、新しい機械が出ているのに半年間誰も替えないで、使えるんだからいいといってずっと替えないで我慢されることを恐れております。皆さんのお話ですと、入れ替えはするけども、それには資金が必要だから、一度に入れ替えるお金が無いから考えてくれないかというお話でした。それを私は信じたのに、ずっと替えずに数カ月後に一度に変えるんだったら、入れ替えできるではないかと、結局資金がないのではなかった、となることを私は非常に恐れています」

②2005年(平成17年)10月12日 全日遊連全国理事会

警察庁生活環境課課長補佐 鶴代隆造氏による講話(抜粋 ※括弧内は著者補足)

「(規則改正に係るみなし機の取り扱いについては)特に中小規模の営業者への経済的負担が過度にかかるので少しでも軽減してほしいという貴団体からの要望を踏まえたからです。警察庁としては、そうした要望を踏まえ、みなし遊技機については、新基準適合機が市場へ投入されるのに合わせて順次入れ替えられていくものとして、その取締りを猶予してきました」

「営業所における新基準適合機への円滑な遊技機の入れ替えについては、ホール業者の方々だけで悩む問題ではなく、ホール業者、メーカー、販売業者等業界関係者が、業界の将来をどのようなものにしていくべきか真剣に議論しながら検討していくべきことではないかと考えたからであります。業界の将来のために、どのような遊技機が必要か、メーカーはそうした遊技機の開発・製造を優先的に進めるべきではないのか、メーカーがそれをいくらで販売してくれるならば、ホールはどのぐらい買うのか、射幸性の低い遊技機で営業を成り立たせていくためにはどのような営業スタイルに移行しなければならないのか、そのためにはどのようにコストを減らし、どのように新たなファンを獲得していかなくてはならないのかといったことを膝詰めで議論することで、業界の抱える遊技機の問題を解決することが可能になるのではないでしょうか」



これらを念頭に置きつつ、今回のコロナ禍への対処として極めて異例の措置として警察庁が「業界団体による旧規則機撤去の取組に対する信頼をベースに行った」経過措置期間の延長について考えると、新規則機への入れ替えが不可逆的に、且つ期限内で完遂されなければ、業界側は監督官庁からの信頼を決定的なまでに失う事すらもあり得るのだと言って良いかと思う。

ゆえに私としては、業界団体側による「誓約書」に基いた自主的な設置期限ガイドラインの策定を全面的に支持し、いかに企業経営・店舗運営の状況が厳しくとも、これは全国のホールが完遂出来るようにすべきであるとここで記しておきたい。

またホールの立場において、メーカーをはじめとした各職域の協力も是非お願いしたいと思う。

休業要請によるホール側の負担はユーザー側の遊技上の負担増にも結び付き易く、来年に掛けては特に廃業店舗の増加のみならず遊技人口の急減の可能性も非常に高いと見ているからである。

ぱちんこが持つ「人を引き付ける大きな力」

第一・第二に続き小堀氏の行政講話で最後にピックアップするところは、休業要請について述べた文脈において風俗営業の本質について触れた箇所である。

同氏は、休業要請への対処について業界団体幹部の「強いリーダーシップ」と「粘り強」い説得、また「緊急事態宣言や休業要請が出されていない段階から、感染拡大防止という社会的要請を敏感に感じ取り、自発的に臨時休業を始め」、そのような動きが日遊協内でも広がった事と「多くの方々の社会的責任に対する率先的かつ真摯な対応について改めて敬意」を表するとした上で、一部店舗は知事の要請に応じず行政処分を受けるに至った事でマイナスイメージを形成し同時にのめり込みや依存問題に対しての注目が集まったとし、更にこの流れで定番となる射幸性の抑制に言及し「皆様には、今一度、ぱちんこには、人を引き付ける大きな力を持っていること、それ故、人によっては、遊技が過度になってしまい、負債、家庭問題等に至ることがあることに思いを致していただきたい」と要請している。

ホールが営業しているだけである程度勝手にユーザーが集まってしまい、それは「越境」してまで、また数百・数千人規模の開店待ちを伴ってまでなされる場合もある事から、地方自治体のみならず各種報道機関もこぞってこれを問題視した事は記憶に新しい。

こういった状況や今回の講話で私が思い返したのは、奇しくも小堀氏と同世代でかつて同じ部署の同じ職位に就いていた事もある蔭山信氏による風俗営業の定義である。

蔭山氏は自身の著書である『注解風適法』において、ぱちんこも含めた風俗営業は「人間の本能的欲望に立脚した歓楽性・享楽性にわたる営業」であり、「不適正に、また、不健全に営まれる」事により善良の風俗や勤労の美風、青少年の健全な育成などが害され社会に退廃的な雰囲気が蔓延するおそれがある、という主旨の事を述べている。

歓楽性や享楽性という事に関しては、これは何もパチンコスロットに限った事ではなく、コロナ蔓延の過程で自粛や休業を含めた政府・地方自治体からの各種要請の発出に際し、カラオケ店、ライブハウス、ボウリング場、ビリヤード場、麻雀店、その他接待を伴う飲食店など ” 不要不急 ” と称された各業種店舗が厳しい視線に晒された様子を目の当たりにする事で、ホール関係者やユーザーの立場ではこのような状況で如何にして対策したり遊技すべきか、或いは日本国民・各都道府県住民という立場では政府・地方自治体としてこれらの業種店舗をどのように制御すべきかという事に思いを巡らせた方も多かったのではないかと推察する。

東日本大震災のような国難の際にもやはり話題になった事だが、社会全体が苦境に置かれている際のホール営業はどのようにして在るべきか、個々のホール・組合組織として社会ならびに監督官庁たる警察庁に対してどのような姿勢を提示できるか、これは突き詰めて考える必要がある。

そうしなければ、将来的に似たような世情になった際にも政府・地方自治体が取り得る最も無難な施策としての「休業要請」に対して何ら為す術なく、言われるままの期間において完全に従わざるを得ない状況にも陥るだろう。

勿論、休業要請を完全に拒否するという意味ではなく、休業に至る前に納得して貰えるだけの対策を業界側で模索し提示する事で、ひょっとしたら条件付きで営業を許容されたり、休業したとしても営業再開がより早期に計られる場合もあるだろう、という事を述べている。

今回のコロナ禍で表面化したのは ” 不要不急 ” の業種店舗に対する世の人々の非常に厳しい態度である。

実際、休業すべしの「世論」が最高潮に達した4月の下旬には、WEB・SNS上において何故警察(所轄)は未だ営業を継続するホールに立ち入って休業させないのか、といった疑問を呈する者も見受けられたり、それがなされないのは警察とぱちんこ業界が癒着関係にあるからだとする古典的な意見までもが再び立ち現れて来ていた。

警察庁(国家公安委員会)としては、民業であるホール営業に対して確たる根拠もなく一律的に立ち入ったり休業などの措置を強制する事まではしない。

これは、先に挙げた蔭山氏による現行の風営適正化法の前身である風営取締法(昭和23年)の制定経緯の解説において下記のように述べられている事からも風俗営業に対する警察庁の取り締まりスタンスが窺い知れ、このスタンスは現行法に引き継がれていると解釈できる。

警察制度の変革に伴い従来の所謂行政警察事務は逐次整理せられ警察は本来執行機関たるべしの原則が確立されたが本法の実施によって警察機関が営業免許その他の行政権限を行うことになるのであるが、本法の趣旨は、警察機関が犯罪の予防の目的のために必要なる最小限度の行政権限を行わんとするものであり、それ以外の目的に出るものではないのであって、もとより本法によって警察の責務が拡張されたのではなく、本法の権限は警察法の規定する警察の責務に含まれるものである。

従って本法は、従来のように営業警察として、営業自体の全面的な行政取締を行わんとするのではないからこの点を顧みて必要以上の権限行使或いは権限の濫用のないようにされたい。

第4条の行政処分の権限を行使するについては不当に営業権を侵害することのないように注意さるべきである。

第5条に規定する聴聞は、公安委員会の行政処分の権限が公正に行使され、国民の権限が不当に侵害せられるようなことのないために設けられた条項である。聴聞の運営については、未だ殆ど前例がなく又その手続の細目も定められていないが本条の設けられた趣旨に鑑み民主的にして権威ある運営に留意することが必要である。

本法の第6条の規定によって、警察官吏又は吏員が風俗営業の営業所に立ち入る場合には、本法の目的を達するに必要なる限度において行われるべきであって、この場合には予め警察署長又は所属長の承認を受けせしめる等十分慎重を期し、みだりに関係者の正当の業務を妨害することのないよう留意すべきである。

勿論、警察行政側がこのようなスタンスだからとは言え、自粛・休業要請等のホール営業に対する様々な干渉に対して法的根拠がない、訴えれば勝てる、などと居丈高に反応するのはあまりに前時代的な業界人の姿であると言える。

しかし、ホール企業経営や店舗運営の場面で、このように警察側や「世間」に対してファイティングポーズをとろうとする旧世代の者が未だに居るというのも事実であり、実際に私は東京都ならびに都遊協の方針に対していつから・どこまで従うのか、どの程度の感染拡大防止対策を講じるのか等という事業上の判断において、組合からの脱退も含めた強硬姿勢を打ち出す経営陣と対峙し、一時的にではあるが非常に厳しい立場に置かれる事となった。

東日本大震災やコロナ禍は極めて例外的な事情だとして片付けてしまう事も当座では可能だが、しかし今回のようにホール営業の是非が究極的なまでに問われたり組合組織の意義や警察行政との関係性について真剣に考えるような機会は時に現出するため、私自身「次に」今回のコロナ禍と同様かそれ以上に厳しい世情や業界状況となった際にどのように振る舞うのかについて、改めて思いを巡らすようになっている。

まとめ

本稿は6月18日の日遊協通常総会における警察庁生活安全局保安課長小堀氏による行政講話をきっかけとして、主に若手業界人や業界の有り様を日々観察しているユーザーの方々を想定読者として「ぱちんこ業界における行政講話とは何か」「近年では主にどのような事が語られているのか」「今回の小堀氏の講話が持つ意味」について、ごく簡単にではあるが私見も交えながら解説させて頂いた。

特にホール側の若手の方々におかれては、おそらくはコロナ蔓延に至るこの3~5月期間において上長が非常なる緊張感を持って厳しい判断を迫られる様子を目の辺りにした事と推察する。

これは、数年後ないし十数年後の皆様の姿であり、切羽詰まった状況で自らが決定的な判断を下さざるを得ないような状況に置かれる事にもなろうかと思う。

「その時」に、自社・自店にとって適切且つ業界にとって在るべき判断を下す事が出来るように、また業界の大勢を把握するという意味においても、面倒がらず日頃から重要度が高い行政講話の内容に触れ自分自身の考え方を洗練させて下さればと願いつつ、本稿を締めさせて頂く。

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[参考]

蔭山信『注解風営法』東京法令出版

楽太郎

Posted by 楽太郎