①ぱちんこ店への停止要請・指示について②国・地方自治体によるIR整備日程の確認【IRにまつわる動向:4月版】

寄稿文

はじめに

 2020年4月、特に下旬からパチンコホールに対するバッシングが強くなり、新型コロナウイルス感染症関連の報道でも「パチンコ」が頻繁に言及されるようになりました。どうしてこのような事態に至ってしまったのでしょうか。本稿ではまず、都道府県によるパチンコホールに対する政治的な働きかけを、私なりにまとめてみたいと思います。4月にあったIRにまつわる動向については、本稿の終わりに触れることにいたします。

パチンコホールへの「(営業)停止要請」と「停止指示」

 3月20日の「春分の日」から22日までの3連休は、後に「魔の三連休」と呼ばれるようになり、特に「特定警戒都道府県」と呼ばれることになる地域を中心に、4月上旬に起こる感染爆発の原因となる行楽地への外出などといった行動が多く行われていたとされています。3月中にはまだ、ヨーロッパやアメリカでの感染蔓延が盛んに報道されてはいましたが、皮膚感覚として報道などを通して受け取る日本社会の危機感は、4月に入ってからほどではなかったように思います。

 感染者数は、特に東京都内で、3月下旬から急増していました。東京都の感染者数は、4月4日に1日あたりで初めて100人を超え、5日には143人、11日には197人を記録します。政府は7日、東京、神奈川、埼玉、千葉、大阪、兵庫、福岡の7都府県に「緊急事態宣言」を発令します。この「緊急事態宣言」は16日、全国47都道府県へと拡大されます。「緊急事態宣言」の発令は、イタリアでは1月31日、2月23日に韓国、3月2日にフランス、同月13日にアメリカ、同月18日にオーストラリアで実施されていたことなどと比べると、日本におけるその発令時期は「遅かった」と言えそうです。

 7都府県に「緊急事態宣言」が出されてから3日後の10日、東京都は「緊急事態措置」として、パチンコホールなどに「停止要請」を行いました。これは、「新型インフルエンザ等対策特別措置法(特措法)」第四十五条第二項の「特定都道府県知事は[中略]政令で定める多数の者が利用する施設を管理する者[中略]に対し、当該施設の使用の制限若しくは停止[中略]を講ずるよう要請することができる」とした条項を根拠とした措置でした。また、「新型インフルエンザ等対策特別措置法施行令」第十一条には「多数の者が利用する施設」として、九号で「遊技場」(=パチンコホール)が指定されていました。「緊急事態宣言」の全国への拡大に前後して、何人かの知事は東京都と同様、パチンコホールに「停止要請」を行いました。ただし、知事がこの時期に「制限」あるいは「停止」を求めた「多数の者が利用する施設」は「遊技場」だけではありませんでした。ですが報道では、知事からの「要請」があったにもかかわらず営業を続けるパチンコホールがあった、ということが大きくクローズアップされていました。

 大阪府は4月24日、全国で初めて休業要請に応じないパチンコホールの屋号(=ホール名)を公表しました。この後、知事による「休業要請に応じないパチンコホール」の屋号公表が相次ぎます。

 特措法は、前述の第四十五条第二項に続く第三項で「施設管理者等が正当な理由がないのに前項の規定による要請に応じないときは、特定都道府県知事は、新型インフルエンザ等のまん延を防止し、国民の生命及び健康を保護し、並びに国民生活及び国民経済の混乱を回避するため特に必要があると認めるときに限り、当該施設管理者等に対し、当該要請に係る措置を講ずべきことを指示することができる」と定めています。ついに、兵庫県と神奈川県は5月1日になって、休業要請に応じないパチンコホールに対し「(営業)停止指示」を発しました。この指示を受けたパチンコホールには、営業を停止する法的な義務が生じますが、罰則規定は定められておらず、さらには指示を出すにあたって「いつから」そして「いつまで」という時期も明確には定義されていませんでした。特措法に基づいて店名が公表された「施設」はパチンコホールのみであり、「停止指示」が出されたのもパチンコホールのみです。

 マスコミ報道に代表される世論が、知事にこの判断を促し後押しした、という見方ができるかもしれません。それにしても、何人かの知事はなぜ、そしてどのようなプロセスを経て、「新型インフルエンザ等のまん延を防止し、国民の生命及び健康を保護し、並びに国民生活及び国民経済の混乱を回避するため」として、特にパチンコホールに対して「営業停止」を要請し指示するに至ったのでしょうか。パチンコホールが新型コロナウイルス感染症を蔓延させていると判断する際の根拠となったのは、どのような実証データだったのでしょうか。そしてなぜ、要請、指示の対象が、特にパチンコホールに特定されたのでしょうか。さらには、休業に伴う補償措置が政策化され明示されていない状況下において、地方自治体が事業者に「営業停止」を指示することは、正当化され得るのでしょうか。営業停止に補償が伴わなければ、そのパチンコホール企業は遠からず廃業に追い込まれることも免れないということは自明であるにもかかわらず、です。

 またその一方で、パチンコホールは、このような事態に至ることを回避するために、どのような行動や振る舞いを社会から要請されていて、また積み重ねておく必要があったのでしょうか。これらの経緯や命題について、これから丁寧に検証されていく必要があると感じています。

4月にあったIRにまつわる動向

 この4月は、「緊急事態宣言」が出されるなど、日本において新型コロナウイルス感染症に対する政策が、対処療法的な医療と公衆衛生の枠を越えて、封じ込めの次元へとようやく本格的に水平展開されていき、地理的にも東京都内から順次、全国化していった期間であったと言えます。その過程においてなぜか、パチンコホールに対する要請や指示が突出し、報道でも注目が集まりました。パチンコホールについてはまさに、「槍玉に挙げられた」という表現がぴったりだと感じています。

 国によるIR(カジノを含む統合型リゾート施設)整備のスケジュールについては、コロナ禍の蔓延があっても、「見直す」というアナウンスはいまだ出されていません。そのためいくつかの地方自治体は可能な限り、「コロナ禍」前のスケジュールに沿って準備を進行させています。

 大阪府・大阪市はすでに3月27日、スケジュールを3カ月遅らせることを決定し、IR事業者からの提案審査書類の提出期限を「4月頃まで」から「7月頃まで」へと延期しています。また、万博前を目指していたIR開業を事実上、断念しています。4月中には、パチンコホールに関しては全国に先駆けた「素早い対応」が目立った大阪府・大阪市でしたが、IRに関連する表立った動きは見られませんでした。

 横浜市は、市内の各区においてIRについての市民説明会を昨年12月より実施していますが、「コロナ禍」のために2月中旬より中断を余儀なくされています。また、事業者公募の前提となる実施方針の公表を6月に予定していましたが、8月へと延期しています。

[参考]横浜市HP『横浜IR(統合型リゾート)実施方針公表時期を6月から8月に変更しました』4月15日更新

 和歌山県は3月30日から、IR公募への参加資格の審査書類を受け付けていましたが、4月末で受付を終了しました。県は5月1日、クレアベストニームベンチャーズ株式会社とサンシティグループホールディングスジャパン株式会社の2者から応募があったと公表しています。5月中旬に審査結果を公表する予定としています。

[参考]和歌山県HP『「和歌山県特定複合観光施設設置運営事業」の事業者公募における参加資格審査書類の提出者について』5月1日更新

寄稿者紹介

ひら・たいら氏

<プロフィール>

長年にわたり、ぱちんこ業界に携わっている業界人。

特に、ぱちんこ業界における依存問題対策、ギャンブリング障害、IR関連の動き等においては専門的な知見を持つ、楽太郎にとっての重要な情報提供者の一人。